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気が付くと、部屋の外が、ザワザワとさっわがしかった。
何が起こっているのだろうと、ドアの方を眺めていると、騒動はドアの直向こうまでやってきた。
そしてノックも、遠慮もなく、ガラリとドアが開いて、記憶より、少しくたびれた父が立っていた。
父はいつも、びしっと髪を撫でつけ、三つ揃えのスーツを着ていたが、今の父は、髪を振り乱し、ジャケットもネクタイもしていなかった。
走ってきたのか、呼吸が乱れて、はぁはぁと、肩で息をしていた。
「理仁…」
静かに、理仁の横に立って、目を開けている理仁の顔を覗き込んだ。
理仁も目だけで父の顔をみた。
父は、力なくその場にすわりこんでしまった。
「とーさん…」
理仁は、どうにか声を振り絞って声を出した。
小さな声のその呼びかけに、父はベットにすがって、よじ登るように伸びあがると、理仁の頬を両手で挟んだ。
「理仁、わかるか?」
理仁は、首だけ振って答えた、父の目から溢れた涙が、のぞき込まれた理仁の頬に額に、はらはらと落ちた。
あまりにも、感情を露にする父に、あっけにとられた理仁は、何度も頷いて見せた。
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