その頃、紗倉樹は

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「一度でいいから、このパールも一介のペットぶって 呑気に街をお散歩してみたかったんよ。 やっと夢が叶ったわ、夢って見るもんじゃなく、 叶えるもんやってホンマやな。 ほな、樹、待ってるわ、後もう少しかかりそう? ところで、なんかお土産はあるの?」 旅の間にすっかり髪の伸びた紗倉家当主、 紗倉樹(さくら いつき)は、頼れる執事犬パールの 止めどないトークに、髪を掻き上げながら、 うんうんと、相槌を打った。 やがて孤独な胸の奥に、旅の疲れも吹っ飛ぶような 温かい光が差した心地がして、 「じゃあな」と、通話をオフにした。
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