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遡ること、私立『キャッスルサイド学院』の
『中高等部合同春のお花見マラソン202X』で一躍、
トップテンに躍り出た本郷櫻子は、明くる日から
生まれて初めて、校内での人気が出始めたのを
実感していた。
早速、陸上部の顧問から直々、お声がかかった。
『10年に1人の逸材』の可能性があるかもよ、
「ウチの部に来ない?」と、口説かれた。
購買部にパンを買いに行けば、誰彼となく、
「紗倉先輩と知り合いみたいよ、あの子」と、一目
置かれる対象となったし、廊下を歩けば自然と、
視線が追っかけて来るのを感じた。
ただ、それを快く思わない人物もいたのである。
意外にも、櫻子の隣の席のマミである。
メイク技術に研鑽を重ねたマミの日課は、
「鏡よ鏡よ鏡さん世界で一番可愛いのはだーれ」
とミラーに向かうこと。
「もちろんマミにきまってらぁ」と、
背後からマミを溺愛する父親の合いの手も手伝って、
自己肯定感が鬼になっていたマミは、
クラスの人気者の座をすんなり櫻子に譲るわけには
いかなかった。
そうとも知らず、櫻子は
「‥‥なんて、パパすっかり乗り気なんだけど」と、
うっかり、マミに引っ越し話を打ち明けたのだった。
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