その頃、紗倉樹は

2/3
前へ
/9ページ
次へ
十数時間後、ようやく帰国した樹は、 「お、パール、元気か」と、 空港から、執事犬パールに電話をかけた。 「おう、(いつき)、お帰り。 てか、こっちはなんか面白い展開になっとるで」 「いったい何があったんだよ?」 「まあまあ、家に着いてからのお楽しみにしとこ。 ここ数日、私めパールはモテモテなんよね、 毎日、日替わりでお散歩楽しんでおります、樹も、 これから毎日、ちょっと楽しいなるんちゃうかなぁ。 いつも人知れず、世界中の桜の樹の為に祈りを捧げ、 季節を問わず距離を問わず走り続ける、タフで 真面目な樹にも、(ささ)やかな幸あれやな、うん、 我ながらええこと言うわ、ウウーーッワンワンッ」。 「なんだよパール、犬みたいな声出してさ、」 ちょうど今から、 本郷家は清楚系女子の櫻子、 権藤家はギャル系のマミによる、 紗倉家の犬系男子パールの朝と夕方の、お散歩権を 巡って真剣に、ジャンケン勝負が始まるところだ。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加