その頃って、いつやねん?

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その頃って、いつやねん?

「いらっしゃいませー」 5月の元祖お好み焼き店『本郷』のテーブル席で、 食後のソフトクリームに 熟年マダム達が舌鼓を打ちながら、 際限ないお喋りに癒しを感じていた頃、 元祖お好み焼き『本郷』の(あるじ)(たかし)は、3軒隣の喫茶店でマスターに、 (そそのか)されていた。 「店を拡大しちゃいなよ、 2階3階を改装してテーブル席を増やすんだよ」 海外からの観光客が激増しつつある今日、 『本郷』にも、店の前に、客が、 行列を成す光景が見られるようになっていた。 もっとも櫻子は、、『本郷』の繁盛の秘密を別の観点 からも捉えていたのである。 「パールがウチの店の前に現れてからというもの、 なんだか色々いい感じ‥‥」 そう独言ながら櫻子が、ルンルンと、 導入したばかりのソフトクリーム製造機から クリームを絞り出し、固まり具合を調整していた その頃、 「そういえば、櫻子も 一度でいいから家っぽい家に住んでみたいなんて ドラマ見ながら言ってたなぁ」と再び、崇は 三軒隣りの喫茶店で、クリームソーダをストローで 吸い上げる。 「けど、そうなれば問題は住む家だよ? そうそうお手頃価格で、店とも近い理想的な一戸建て なんて手に入るわけないよな」と、 独り言のように呟きを漏らした。 「それが、、、あるんですよ?今なら。 聞いて驚かないで下さいよ」と、 居合わせたのは、タイムリーにも、これまた、 近所の不動産仲介業者のF氏だ。 「ほお?」と、崇は身を乗り出した。
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