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彼らは顔を合わせるとすぐに、影斗先導のもと、待ち合わせ場所であったカフェテリアへと向かった。
影斗はここM大学の在学生で、4年生――つまり来春の卒業学年だ。
彼と待ち合わせをしていた川崎と沖本は、M大とは別の国立T大学へ通う2年生で、彼ら3人はともに共通の友人がいて、それがきっかけで浅からず深からずな付き合いのある間柄だった。
他大生同士とはいえ学年が違い、また共通の友人が影斗と同じ出身高校ということもあり、彼らの関係も続柄的には"友人"というより"先輩・後輩"色が濃い。
それ以外の面でもまた、川崎と沖本は影斗という存在を自分たちと同列には扱わず、特別視しているきらいもあった。
並んで歩きながら、沖本は長身の影斗を下から眺めるようにうかがう。
「…なんかいつもと雰囲気違いますね」
「? いつもこんなんだけど。お前らと会うのに着るもん盛ったりしねぇぞ」
「っ! いや、もちろんそうでしょうけど…なんか目新しい装いに見えたんで」
「確かに…沖本の言うとおり、いつもよりカジュアルに見えます。…俺たちがいつも見てる先輩は、きっとライダー仕様だからじゃないかな」
そうふたりへ交互に話しかける川崎の言に、興味なさそうな視線を送っていた影斗は少し目を見張り、合点がいったのか軽くうなずいてみせた。
「…なるほど、そっちの大学に顔出す時は、いつもバイク乗ってってたな。乗らねぇ時は大抵こんな感じかな」
「乗る機会はT大来る時くらいですか?」
「最近はそうだな、ここしばらく遠出してねぇし、俺寮生だから大学まで徒歩通学だし」
「さすがに忙しそうですね」
「いやー、お前らに比べれば多分そうでもねぇよ。卒研くらいでほぼ授業ねぇからな」
見慣れた革地のショート丈ジャケットにエンジニアブーツというハードめな装いとは別系統の、Vネックセーターにモッズコートを羽織ったラフな格好でありながら、元々持つ整った顔だちと均整の取れたシルエットで、影斗はやはりそのあたりを歩いている普通の若者とはひと味違う異彩を放っていた。
すれ違う在校生らしき若者たちが次々に振り返っていくのを見、ファッション系統が違ってもなお変わらない人目を惹く影斗の華やかさを再認識し、川崎と沖本は眉を寄せながら小さく唸った。
「…やっぱりかっこいいっすね、エイト先輩」
「なんだ? そんな当たり前のこと言ったところで、昼飯奢る以上のもんは出ねぇぞ?」
「そういうつもりじゃないですよ、事実を言ったまでです」
「…お前ら、マジで俺のファンだよな」
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