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3人は軽く会話を交わしながら洗練された大学敷地内を少し歩き、目的地へとたどり着く。
カフェテリアは、先ほど見上げていたタワーと同じく、やはり先進的な外観の高層建物1階部分に入っていた。
午後のカリキュラムへ臨む大学生たちが概ね姿を消し、かき入れ時が過ぎたらしいカフェ内は、窓際のよく陽のあたる席もまばらに空いていた。
「悪いな、昼過ぎになっちまって。一般開放の飲食時間が13時以降ってことになっててさ」
「大丈夫です。T大も似た感じなんで、事情わかってます」
「単位制っていくらうたってても、結局一番混むのは昼時ですからねー」
カウンターから銘々オーダーしたランチセットを載せたトレイを席まで運び、ひと息つく。
口内を潤すホットコーヒーをひと口すすってから、まず影斗が話を切り出した。
「…奴から少しは聞いたんだよな? お前らが知りたがってたこと」
「! …はい」
影斗の言う"奴"とは、前述した彼ら共通の友人――髙城 蒼矢のことである。
川崎と沖本にとっては同じ大学へ通う同級生、影斗にとっては同じ高校に通っていた後輩で、通う大学の違う彼らがこうしてひさびさに顔を合わせることになった主たるゆえんの人物でもあった。
「…心配かけてすまなかったと、ここ最近調子が悪かった理由については全部解決したと、"理由"の部分は濁されましたけど、そう話してくれました」
「でもこっちとしては、それだけだとちょっと煮えきらない感じだったんで、エイト先輩が最近ご無沙汰だったことにもつっこんで聞いちゃいました。…すみません、プライベートを掘り返すような真似して」
「いや…俺らもだいぶ匂わせちまってたから、お前らが気になるのは当たり前だし、気にしねぇよ」
少量ずつ口に運びながら、影斗はふたりに会話の主導権を渡し、先へ促す。
川崎は、水をごくりと大きく飲み干して気持ちを整えると、対面の影斗へ真剣な視線を送った。
「…髙城は、先輩の想いには応えなかったんですね」
「ああ。全部伝えきったけど、蒼矢は動かなかった」
そのごく落ち着いたトーンの返答に、川崎と沖本は先に蒼矢側から聞き出した顛末を知りながらも、やはり落胆の感情をぬぐえなかった。
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