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トラブルに巻きこまれやすい蒼矢周辺の治安維持のため結束した同級生たちは、そう時間をかけずして、彼の近くにたびたび出没する謎のイケメン・影斗の存在を認知する。
天然か意図的かは判別できないが、蒼矢にからむ影斗の溺愛っぷりは隠すそぶりが無く、彼が蒼矢へ"後輩"以上の愛情を向けていることは誰の目にも明白だった。
一方、それにまったくなびく様子がない蒼矢の淡白さは、彼らの応酬を目の前で見せつけられる衆人にとって、理解しがたい反応だった。
周囲がこれほどまで思い知らされている影斗のひたむきなモーションをなぜ受けとめてやらないのか、本当は拒絶したいのだとしたらなぜ"嫌"とひとこと言ってやれないのか、蒼矢の真意をはかりかねつつ、心中穏やかならず見守り続けた。
蒼矢のごく近しい友人となっていた川崎と沖本は、彼らと出会ってから2年弱をへて、いつか影斗の愛情が実を結び、ふたりが愛しあう関係になってくれればいいと願うようになっていた。
しかし最近、目に見えて彼らに変化が起きた。
なんの前ぶれもなく、影斗がぱたりとT大へ姿を見せなくなる。
それから間もなくして、常に静穏で生真面目な優等生である蒼矢が、どこか落ちつきがなくなったり急に講義をフケて早退してしまったりと、ふるまいに乱れを見せはじめる。
自分たちの知らないところで彼らの間になにかが起きた、ということは容易に察せたが、当事者たちの気持ちを慮ってへたに首をつっこまず、最低限のコンタクトを取るにとどめてひとまず静観に徹した。
一時的に音信不通になった影斗と連絡がとれて、自分たちの中の霧がかっていた部分が少しだけ晴れ、きっとこちらが心配するほどではないんだろうと、以前からどこか変化があるにしても、じきに穏やかな日常がとり戻されていくんだろうと思っていた矢先、蒼矢の方から希望があって話をする場が設けられたのだった。
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