17人が本棚に入れています
本棚に追加
「……」
向かい合って腰を落としたものの、3人は一様に黙りこむ。
話をきり出すべき立場の蒼矢は、沈黙が流れるなかずっと言い淀むような顔色を浮かべ、テーブルに目線を落としていた。
「……えっと…」
「髙城、先に断らせてくれ」
蒼矢が小さく言いかけたタイミングで、沖本は口をはさんだ。
「…無理に話してくれなくてもいいんだぞ? 別に、お前からなにかを聞き出したいとは思ってねぇんだからな?」
「うん。俺たちの方も、君に黙ってエイト先輩に連絡取ったこと…軽率だったと思ってる。プライベートな事情に首つっこんでしまって悪かった」
重い口ぶりにそうフォローを入れてくれる友人たちへ、蒼矢は目を見張り、すぐ首を横に振った。
「…ありがとう。でも大丈夫。俺がちゃんと伝えてなかったせいで、君たちに心配かけたことは確かだから…ふたりにはちゃんと話すって、俺自身の意思で決めたから」
そう意を決した蒼矢は、ひと呼吸し、一旦落ち着きをとり戻してから口を開く。
「影斗先輩が最近大学に来なくなってたのは…少し前に、しばらく距離をおこうって話して。先輩自身も4年生だから、卒研とかで忙しくなってくるし、色々タイミングが重なってそうなってた、ってところで…」
テーブルを見つめながらぽつりぽつりと話し、対面の視線に促されるように核心部分にふれた。
「…先輩に改めて告白されたんだけど…、断ったんだ」
黙ったままの川崎と沖本は表情は変えなかったものの、少しだけ気落ちした。
と同時に、"改めて"という言葉に彼らが積みかさねてきた数年間の結末が見えた気がして、この先ふたりの関係性が変わることは決してないんだろうと、きっぱり納得させられてもいた。
「先輩とコンタクトとらなくなったことで、君たちにも心配かけてたなんて、思いもよらなくて…ごめん。俺、自分のことしか見えてなかったから…」
「いやいや、髙城が謝ることじゃないよ。自分のことで手いっぱいになるのは当然だし、俺たちが外野なことも間違いないから」
「でも…お前の最近の非日常っぽいというか、地に足ついてない感じがどうしても気になっちゃってさ。先輩がらみなのかなって勘ぐっちまってたんだよ」
そう返してくるふたりへ、蒼矢はあわてた素振りで続ける。
「あ…最近俺が大学来れなかったりしてたことは、先輩とのこととは関係ないんだ」
「? そうなの?」
「うん…、全然別の事情があって…それで。…先輩とは無関係ってことだけは、ふたりに伝えておきたくて」
目算が否定されて虚をつかれたふたりだったが、蒼矢の口振りや仕草はごまかしてないように見え、少し訝しみつつも納得することにする。
最初のコメントを投稿しよう!