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川崎は、蒼矢と話した時の出来事を思い出しながら、意を決して口を開いた。
「…髙城は、自分を曲げられないからエイト先輩の想いには応えられなかった、という風に言ってました」
「ああ。…そうなんだよな、あいつすげぇ頑固なんだよ」
「つまり、髙城には既に想ってる人がいたってことなんですか?」
影斗の反応をうかがいながら、川崎は核心をついた質問をしていく。
隣でさーっと青ざめる沖本がふたりを交互に見守るなか、影斗は変わらず落ちついた素振りで返してきた。
「…そういうこと。いつからかはわからねぇけどな。でも俺は、少なくともその後に蒼矢と出会ってるから、開幕出遅れスタートだったってわけだ」
「…残念です。俺、先輩と初めて会った時から髙城とお似合いだって思ってたから…いつもふたりをセットで見てたから、こういう結果になっちまったってことが、まだ受け止められないです…」
沖本はうつむきながら、小声で漏らす。
彼の愚痴りを聞いた影斗は、ため息をつきながら眉を寄せた。
「外野のお前が引きずってても、俺にはなんの得にもならねぇよ。俺はお前らとこれ以上深くよろしくやろうなんてつもりは更々ねぇんだから、変に肩入れされても迷惑だ」
「…っ!」
強い口調で突っぱねられ、沖本は肩をすくめて萎縮する。
川崎もつられて縮こまる中、影斗は視線鋭く続けた。
「お前らは蒼矢の友達なんだろ? お前らの方から俺に、大学卒業した後も蒼矢とずっとダチでいるつもりだって宣言してきたんだろうが。宣言したなりに、務めはきちっと果たすってのが道理じゃねぇの? あいつの隣にいる奴に、自分の理想を押し付けんな」
影斗はそう低くつらつらと述べ、もう一度息をついた後、ふたりへ頭を寄せて頬杖をついた。
「この先あいつが誰のそばにいるとしても、歓迎して見守ってやれよ。…俺のファンだってんなら、俺と思いを同じくしててくれ」
端正な顔立ちから眼差し穏やかにそう諭され、呆けた面持ちで聞き入っていた沖本は一気に涙腺を緩ませ、肩を震わせながら目に腕を押しつけた。
「…おーいー。だからそういうのは嫌なんだって」
「すみませんっ…すみません! でも、抑えられなくてっ…! 決して同情とかじゃないんです!! ただ…ただ、エイト先輩が漢過ぎて、感激しちゃって…っ…」
「"漢"って言うのかね。逆に"ヘタレ"じゃねぇの?」
「絶対そんなことないです!! …っかっこいいです!!」
「そかそか。あんがと」
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