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1.嘘と、隠しごと。
『真野さんってさあ、』
『はい。』
『あの真野さん、だよね?』
『…そう、ですけど、』
思えば半年くらい前のこのよくわからない会話が、すべてのはじまりで。半年経っても、未だに『あの真野さん』の“あの”の真意はわからないまま。
そして、今も。
「ね。真野さんもそう思いません?」
「…そう、ですね?」
「いや、絶対真野さんなんの話かわかってないでしょ。」
8階病棟から1階に向かうエレベーターに入った瞬間、すでに上の階からのっていたらしいドクターふたりに絡まれた。もちろん話しかけられる以前の話の内容なんて私は知る由もないので、適当に応えてみただけである。
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