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涙なんて出なかった
引っ越し業者の人が部屋に来たとたん静かになった佐奈。
「これも、これもいらないから」
佐奈から貰ったシャープペン
一緒に撮ったプリクラ
もう着なくなったとくれた大人びたワンピースも。
「じゃあ、燃やす?うそうそ・・アハハ!!睨まないでよ。茜」
思い出の品を見たら涙が出て、佐奈を許せるんだと思った。だけど、性根が悪い友人の顔をまた一つ垣間見れただけだった。
「さよなら、佐奈」
佐奈が部屋から出て、共同廊下から見送ってくれる。元カレだった兄は一足早く父の実家である新潟へ引っ越していた。
「バイバイ!!茜」
張り紙を見ることも、スプレーでいやな言葉を書かれたこともない佐奈は他人事のように満面な笑みを浮かべて手を振る。
わたしは振り返ることはなかった。もう見たくない人に変わっていたから。
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