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夜行バスに揺られ、真っ暗な住宅街を歩き、たどり着いた祖父母の家はゲコゲコと蛙が鳴いていた。
「はよ、入れて!!」
犯罪者の家族にしてしまった。優しかった祖父の笑みは消え、キョロキョロと外を見た祖母が長いため息を吐く。
「なー、なぁしたて!!」
祖母が方言のまま聞いてくる。父が僕の頭を掴んで下げた。
「修也、謝れ」
お前、なにしたと聞いた祖母。スマホを持っていてもSNSには無頓着のよう。
「ばあさん、じいさん、ごめんなさい!!」
「修也、じいさんとこ来ても同じことさ」
父方の実家も、母方の実家も特定されている。どこに越しても炎上は消えない。
「それでも越してこい言うたのは、家族だからだ。わかったか?修也」
父の手が放れこくこくと首をを何度も動かす。
最悪の状況下で知る家族の絆
「ありがとう。じいさん、ばあさん」
*
木のかおりがホッとさせる。二階に上がり、木目がこわいと泣いていた部屋に通される。
「しばらくは家から出るな」
バタンと引戸を閉められた。スマホも没収され、デジタル・デトックスされた今が心地いいなんて。
「父さんごめん」
まだ廊下にいるだろう父に声をかけた。一生背負い続ける罪は重い。
「修也、久しぶりに一緒に寝るか」
六畳間の洋室に布団を持ち込んできた父が再び引戸を開ける。
「男同士よーう話せばいいさ」
祖母の細い目がふと笑う。明日になれば、どう転ぶだろう?
『田中さんちの長男が』
なんて声を毎日聞くのだろうか?
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