2/3
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 夜行バスに揺られ、真っ暗な住宅街を歩き、たどり着いた祖父母の家はゲコゲコと蛙が鳴いていた。 「はよ、入れて!!」  犯罪者の家族にしてしまった。優しかった祖父の笑みは消え、キョロキョロと外を見た祖母が長いため息を吐く。 「なー、なぁしたて!!」  祖母が方言のまま聞いてくる。父が僕の頭を掴んで下げた。 「修也、謝れ」  お前、なにしたと聞いた祖母。スマホを持っていてもSNSには無頓着のよう。 「ばあさん、じいさん、ごめんなさい!!」 「修也、じいさんとこ来ても同じことさ」  父方の実家も、母方の実家も特定されている。どこに越しても炎上は消えない。 「それでも越してこい言うたのは、家族だからだ。わかったか?修也」  父の手が放れこくこくと首をを何度も動かす。  最悪の状況下で知る家族の絆 「ありがとう。じいさん、ばあさん」 *  木のかおりがホッとさせる。二階に上がり、木目がこわいと泣いていた部屋に通される。 「しばらくは家から出るな」  バタンと引戸を閉められた。スマホも没収され、デジタル・デトックスされた今が心地いいなんて。 「父さんごめん」  まだ廊下にいるだろう父に声をかけた。一生背負い続ける罪は重い。 「修也、久しぶりに一緒に寝るか」  六畳間の洋室に布団を持ち込んできた父が再び引戸を開ける。 「男同士よーう話せばいいさ」  祖母の細い目がふと笑う。明日になれば、どう転ぶだろう? 『田中さんちの長男が』  なんて声を毎日聞くのだろうか?
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!