埴輪マン 古代からのメッセンジャー

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僕は西条大和(さいじょうやまと) 、帝都大学の三年生で考古学を専攻している。 特に日本の古墳に興味があり、日本考古学の権威である松井博士の下で古墳の発掘の手伝いをしている。 現在、日本全国に古墳と呼ばれる遺跡は約16万基あると云われている。 その中でも権力者の墓とされる前方後円墳と呼ばれる古墳は約4,700基ある。 「博士、この古墳はどんな人が埋葬されたんですかね?」 僕らは新たに発見された前方後円墳の調査に来ていた。 「そうだねぇ…この大きさから考えると村長クラスじゃないかな?」 大きさもそうだが、形も崩れていて歴史的価値は低いとみられる古墳だ。 「それじゃあ、埴輪も出ないかも知れないですね」 古墳は3世紀後半~7世紀頃に墓として作られ、そな中にある人や動物を型どった土製品が『埴輪』である。 日本で最初に書かれた歴史書の一つ「日本書紀」にも、天皇が死んだ時、生きた人の代わりに人の形をした土製の人形を立て並べたものが埴輪である、と書かれている。 「まあ、埴輪は故人の権力の象徴みたなもんだからね これくらいの古墳だと難しいかな?」 松井博士もあまり期待はしていないようだ。 しかし、発掘を進めていくと思わぬ埴輪が出土する。 「博士、これって武人埴輪じゃ?」 『武人埴輪』とは鎧兜を纏い剣を携えている埴輪で故人を守る役割がある。 「…ちょっと形状が変わっているけど武人埴輪っぽいね」 「なんか顔が遮光器土偶(しゃこうきどぐう)みたいですよ」 土偶とは、縄文時代(約1万年前~紀元前4世紀頃)に作られた土製の焼き物のことで、呪術に用いられたと考えられているものである。 「土偶と埴輪では作られた時代が全然違うからねぇ まあ、埴輪を作る時に古い土偶を参考にしたのかも知れないけど…」 松井博士は形には余り興味がないようだが、僕はこの埴輪を興味深く観察した。
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