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僕は自分の目を、耳を疑った。
「…は、埴輪が喋った?」
『急いでこの人形を壊して私の力を受け継ぐのだ!』
埴輪は命令口調で話す。
「こ、壊すなんて出来る訳ないだろ!?
貴重な考古学の資料なんだぞ」
『そんな事を言ってる暇はないぞ
悪しき魂の一つが覚醒した!』
埴輪の言葉が終わると同時に石室から調査員たちが飛び出してきた。
「ば、化け物だ!」
「博士が化け物になった!」
調査員たちの後からどす黒いガスが溢れ出してきた。
「…血だ、…血を寄越せ!」
そのどす黒いガスから松井博士が出てきた。
赤く光る瞳、額に角、鋭い牙と爪はまるで悪魔その者だ。
「博士!どうしたんです!?」
『無駄だ、彼は覚醒した悪しき魂に乗っ取られている』
「そんな!僕はどうすれば…」
僕はパニックになっていた。
「西条!逃げろ!」
他の調査員が僕に叫んだ。
目の前にもう化け物となった松井博士が迫って来ていた。
僕は咄嗟に持っていた埴輪を化け物の前に向けると埴輪が眩い光を発した。
「ウガァァァーッ!」
化け物の視界が奪われているうちに物陰に隠れた。
「博士…、何でこんなことに…」
『奴を倒せば、乗っ取られた人間も元に戻るかも知れないぞ』
埴輪が諭すように話した。
「倒すって…、格闘技とか知らないし、力も全然ないのにどうやって…」
『私の力を受け継げば奴を倒せる!
早くこの人形を壊すんだ!』
僕は一瞬躊躇したが、埴輪を近くの岩に叩き付けた。
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