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雪side
深く……深く……
ゴポッ
耳が痛くなって……
光も届かなくなって……
ゴポゴポッ
そうしたら………
ザバッ
「雪!大丈夫か?!」
「……ケホッケホッ…夏……何?」
「何?じゃねぇよ!何だってお前は、風呂に入る度に、沈んでんだよ?!」
「……イメージトレーニング?」
「何のだよ?潜水の練習なら、どっかプール行ってやれ!毎回、風呂に沈んでるお前を見付ける俺の身にもなれ!」
「じゃあ、夏も一緒に入ればいいのに。んっしょっと」
ザバッ
湯船から上がり、栓を抜く
「男2人が入って、ゆっくりリラックスなんて出来ないだろが!湯船に浸かった意味がない」
「……俺は、風呂に同時に入ろうってだけで、別に湯船に一緒に浸かろうって意味じゃなかったんだけど」
「えっ?!あっ?!そ……そんなの分かってるし!雪が……もし、そう考えてたらと思って、言ってやっただけだし……」
夏の顔、真っ赤……
「っそ。でも俺、バイトで帰る時間不規則だから。気になるなら、夏が入ったら、お湯流しちゃっていいよ」
俺の着替えてる横で、夏もタオルで体を拭いている
「また……どうしてお前は、そうやって極端なんだ?ちょっとは、他にも解決策を考えろよ」
着替え終わり、リビングへと行く
ソファーへと座ると、
「おい、雪。話聞いてんのか?」
「聞いてるよ。別に…湯船に入れなくたって、どうでもいいし……夏が安心出来るようにやっていいよ」
はぁ……
ソファーの背もたれに、もたれかかる
疲れた……
「どうでもいいしって……湯船に浸かったら、気持ちいいだろが」
「気持ちいいね……でも、湯船に浸からなくても死なないし……俺の何かが変わる訳でもないし……どうでもいい……」
疲れた……
こんなに毎日疲れてるのに、人って倒れないもんだ
「あ!お前、また髪乾かしてない!」
「……俺…自然乾燥派だから…気にしないで…」
「もう半分寝てるじゃねぇか!そんな髪のまま寝たら風邪引くだろ!気にするわ!ったく……」
夏が、ゴモゴモ言いながら、洗面所の方へと歩いて行く
多分、ドライヤーを取って来る為に
「まったく……ガキじゃねぇんだから!」
ドライヤーのコンセントを挿しながら、まだ文句を言っている
「風邪引いたって死なないよ」
「風邪は万病の元って言うだろが。ってか、お前は……物事を、死ぬかどうかの基準で考えるな!」
ブォー
ソファーの後ろから、夏がドライヤーをかけ始める
「だって……奨学金返したら俺…死ぬから」
ブォー
「ああ?!何?!何か言ったか?!」
「……何も!」
どんな方法が1番いいのか
夏や夏の家族には、絶対迷惑はかけられない
出来れば、それ以外の人達にも、なるべく迷惑のかからない方法
でも……それは、ちゃんと奨学金を返してからだ
こんな……何の役にも立たないまま……消えてしまう奴の為に……
貸してくれた金くらい……ちゃんと……返さなきゃ……
ドライヤーの温度と……
夏の優しい手のせいで……
俺は、そのまま眠りについた
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