46人が本棚に入れています
本棚に追加
雪side
「雪~」
「…ん、ん~?」
なんだよ……
まだ眠いんだよ……
「ゆ~き~。今日、受けたい講義、あるんだろ?」
「………ある……う~~~……眠い」
ゆっくりと起き上がる
「夏、おはよ」
「雪……バイト…もう少し減らせないのか?」
夏から、何度この台詞を聞いただろう……
「減~ら~せ~な~い!うしっ!起きるか」
身支度を済ませると、
「雪、ちゃんと朝ごはん食べろ」
「朝、食欲ないんだけどな…」
「残してもいいから、少しでも食え」
残してもいいからと言われても……
俺の分の、パン、ベーコンエッグ、ホットミルクが置かれており……
食べない訳に、いかないだろ……
夏は、運のない奴だと思う
たまたま志望校が同じで、仲良くしてしまったばかりに、俺に関わる事になり、俺の世話までする羽目になっている
「お前って……運悪いよなぁ」
「はっ?何いきなり?1日の始めに、そんな事言わないでくれる?」
「夏は同居人であって、家政婦じゃないんだから、俺の世話なんか、しなくたっていいんだからな?」
「……んな事は分かってる。けど、俺が気になるんだから、しょうがないだろ」
「……気の毒な性分だな」
「ほっとけ!」
朝の駅は、凄い人だ
もう少し遅いと、もっと少ないんだけどな
「やっぱ、朝早いと、凄い人だな」
「雪、ふらふらして、すぐ倒れそうだからな。離れんなよ?」
「俺は、お前の彼女か」
電車に乗り込むと…
混んでて、逆に倒れるスペースがない
と、なると……
この揺れ……眠気を誘うな……
ん?
ウトウトしてると、時々後ろの人のカバンが、ケツに当たる
痛い程じゃないし、いっか……
まだ、寝れるな……
ん?
あらら…
これは、明らかに膝でケツ擦ってるわ
チラリと後ろを見ると、
へぇ~?
まだ20代のサラリーマン
けっこうイケメンじゃん
あ!
目が合ったら、赤くなった
おお……
目が合った後、しばらくじっとしてたのに、揺れと共に、どんどん自分の体ごと押し付けてきた……
うん
当たってるね
まあ、生理現象だしね~
「……っ」
時々、微かに、声を堪えてる様な、吐息が聞こえてくる
勇気あるよな~
こんな若さで、人生棒に振るかもしれないのに……
ってか、俺がいつ降りるかも知らないのに、その後どうすんだろ?
駅に着き降りる
夏と改札口へ向かってると、
あ、さっきの人
どうやら同じ駅だったらしい
俺の視線に気付くと、また少し顔を赤くしながら、ペコリと会釈した
「ふっ……可愛い」
「あ?何が?タイプの女でも居たか?」
「ううん。サラリーマン」
「はっ?」
通勤電車で、人生を賭けた痴漢行為をして、そいつに赤面で会釈してくサラリーマンは、今日どんな仕事をするのか?
「面白いよなぁ」
「何が?さっきのサラリーマンの話?」
改札口を出て歩くと、夏が聞いてくる
「そ。あの人は、夏とは違って今、運がいい」
「何で、そんな事分かるんだ?」
「痴漢行為をしても、今日も普通に仕事をして、予定通りの生活が遅れる」
「はっ?!ち…」
夏が、言いかけて、周りを見渡してから、小声で話し出す
「痴漢って、どういう事だよ?お前、それ、黙って見てたのか?何で止めなかったんだよ?!」
「黙って見てたって言うか……痴漢されたのは俺だから」
「………はっ?」
「俺のケツで、朝から気持ち良くなってた。凄いよね?これから仕事なのに、人生賭けて、そんな事するんだから」
「……え?いや……はっ?お前……痴漢…されたの?」
「?そうだって言ってんじゃん」
最初のコメントを投稿しよう!