雪side

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雪side

「雪~。ごめんね、遅くなっちゃった」 「お母さん!お帰りなさい!」 「雪、宿題してたの?」 「うん!」 「えら~い!今日は雪の好きなハンバーグだから、ちょっと待ってね!」 「ハンバーグ!」 母さんは、とにかくいつも働いてて 「雪~。ただいま~」 「お帰り、母さん」 「もしかして、洗濯してくれたの?」 「うん」 「ありがとう!でも、お母さん帰ったから出来るから、大丈夫よ」 俺に出来る事なんて、ほんとに限られてて 「雪~。ただいま~…って、あれ?」 「母さん、お帰り」 「雪、もしかして、料理してくれてるの?!」 「うん。でも……上手く出来ないや」 「雪!怪我したの?!」 「ちょっと切っちゃった」 「いや~!!雪の指が……雪の指から血が……どうしよう……救急車……救急車は199」 「えっ?母さん…こんなの、すぐ血止まるから、落ち着いてよ。それに救急車は119だよ」 疲れきってるはずの母さんは、いつも笑ってて 「雪、お誕生日おめでとう!また1つ大人になったね」 「ありがとう」 「でも、大人になっても、好きな人ができても、結婚しても、時々は……お母さんの事……思い出してね~~!」 「ちょっと…泣かないでよ、母さん。俺まだ13歳になったばっかだよ」 「だって雪、可愛いもの!すぐに好きな人と、お付き合いして…お母さんの事忘れちゃうんだわ~!」 「忘れないよ!忘れる訳ないだろ?母さんの方が大事だよ」 「雪~!……でも、それはダメよ?」 「え?」 「好きな人ができたら、全力でその人の事、好きにならなきゃ。結果はどうでもいいの。雪の好きな気持ちを、全力で応援してあげなきゃダメよ?お母さんも……全力で応援するからね~~!」 「いや…泣いてんじゃん」 母さんが、全力で好きになった人は、どんな人だったのか…… 凄く好きになった人とか…… 可愛い顔してるとか…… 凄く頭が良くてとか…… 優しくて……とか…… 母さんから聞く父さんは、現実味がない 死んだ訳ではなさそうで じゃあ、そんな優しい人は、こんなに頑張ってる母さんを、どうして助けてくれないのか 早く働きたい こんなに働いて優しい母さん 誰か、助けてよ 「雪、先生から聞いたよ?進路希望は就職なの?」 「うん」 「どんな仕事したいの?」 「働ければ、何でもいい」 「う~~ん……それじゃ、却下」 「何で?!母さんも先生と同じ事言うの?大学出ておいた方がいいって?」 「お母さんは、雪に大学行ってもらいたい訳じゃないの。雪が興味あるなら、仕事でも、専門学校でもいいよ。でも、何でもいいは駄目。今、分からないなら、今じゃなくていい。ちゃんと、何がしたいのか考えて?」 「働きたい!働いて、ちゃんと自分で稼ぎたい!それじゃダメなの?」 「駄目」 「何で?!」 「雪への愛情がないもの」 「……は?俺は、早く母さんを助けたい!母さんを助けて、俺が嬉しいんだから、問題ないだろ?!」 「ありがとう。雪は、お母さんに、凄く優しいね。でも、雪にも優しくしてあげなきゃ。働くなんてね、これから先ずっとしてくんだよ?でもね、学生の時間って、ほんとに限られてるの。これをしたい!って、強い思いがないなら、お母さんは、雪にもう少し学生生活オススメするなぁ」 なんで…… 一緒に働いたら、もっと休めるだろ そしたら、母さんだって、もっと楽しい事も、嬉しい事も増えるはずだ 綺麗なのに、いつも、適当な服着て 適当に髪、まとめて…… なのに、そんなの全然気にしてなくて、笑ってて……
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