雪side

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……夢…見てた 何時? 昼……過ぎてる! すげぇ寝た 「ん~~~っと!」 起き上がって、リビングに向かう 夏は、大学行ったな? ほんとに、バイト休むんじゃないかと思った ソファーに座って、テレビをつける へぇ~…… 殺人依頼受けて殺したんだ 優しい人じゃん 自分が受刑するリスク承知で、自分で死ねなくて苦しんでる人、殺してあげたんでしょ? なのに、責められて可哀想 「……泣いてあげるなら、そんな依頼に辿り着く前に何とかしてあげろよ」 「……どうして……あなた達は、泣いてないんですか……」 そう言えば…最近、旭陽(あさひ)さんに連絡してなかったな 旭陽さんは、母さんの弟だ 旭陽さんのコネと手配で、俺達は大学生にも関わらず、たいして高くもない家賃で、こんないいマンションで暮らしている 『お久しぶりです こっちは、変わりありません』 あ、ヤバッ 時間考えないで送っちゃった 旭陽さんは、色んなとこ行ってて、今はイギリスで仕事をしている 俺と母さんを溺愛してて 「今考えたら……シスコンだったんだろなぁ」 年に1回くらしか会わない叔父は 母さんとは真逆で いつも高そうな服や、靴や、時計や…… なんで、母さんだけ貧乏なんだ? 幼い頃は、そう思ってた ヴヴ ヴヴ うわ 旭陽さんだ ヴヴ ヴヴ 絶対寝てる時間でしょ ヴヴ ヴヴ 何件くんだよ 『久しぶり雪君』 『元気かな?』 『なかなか日本帰れなくてごめんね』 『大学は楽しいかい?』 『バイト、あんまり無理しちゃダメだよ?』 完全に起こしちゃった~ 『楽しいです 旭陽さんも、無理しないで下さい』 ヴヴ ヴヴ また?! 寝てよ旭陽さん 『今日も、雪君にとって、いい日でありますように』 いい日ね…… 今日もって いつと比べればいいんだ? 「アパートも……全然帰ってないなぁ」 せっかく時間余ってるし、行ってみるか マスクして、帽子かぶって、下向いてたら、この怪我も分かんないだろ 怪しいけど…… 電車を降りて歩く よく覚えてる景色 しばらく歩くとアパートが見えてくる カン カン カン カン この、階段の音…… 母さんが帰って来る音 ガチャ 「うわぁ……郵便物……」 玄関に小高い山が出来ている 色んな窓を開けて換気をして 「掃除でもするか」 見慣れた床を掃除する 母さんと住んでたこのアパートに、ソファーなんてない ベッドもなくて、布団を敷いて寝てた 中学生になって 俺が家に帰ると話し声が聞こえてきた 「姉さん。雪君だって中学生になったんだし、自分の部屋欲しいに決まってるよ。頼むから手伝わせてよ」 「ありがとう、旭陽。でも、私が我が儘言って決めた事だから、なるべく自分の力でどうにかしたいの」 「それは、父さんや母さんの話だろ?俺は関係ない。姉さんは……何も悪い事なんて…してないじゃないか……」 「旭陽……私は悪い事なんかしてない。だから、あの人達から離れて堂々と生きてる。毎日雪に幸せを貰ってる。だから、私は頑張れる。もしも万が一にでも、旭陽の援助を受けて、やっぱり天海の力が必要かなんて、言われたくないの」 天海の力…… だから叔父は、あんないい格好してんのか よく分からないけど 母さんが天海の力ってのが嫌なら 全然このままの生活でいい 母さんの写真と位牌の前に座る 「母さん、ただいま」 小学……何年生以来だろ? 母さんが亡くなって、俺は母さんに、ただいまを言えるようになった いつも、「おかえり」ばかりだった
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