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「母さん……夏と、上手くやってけないかもしんない……」
あまり俺の事…考えないで欲しい
けど、忘れられるのは嫌で
毎日一緒に居れば安心して
でも、深い話はして欲しくなくて
「俺……我が儘だよね?よく……夏、付き合ってくれてるよね?」
ゴロンと横になる
「……懐かしい…」
この家の匂い……
ここから聞こえる車の音……
懐かしい……
「真優~…ふぇ~ん!」
「あんたの大切な雪君……まだ学生だよ?」
「ぐすっ……早過ぎだよ……」
真優……
母さんが、そう呼ばれてるのを聞くのは、そんなにない
母さんに会いに来てくれた人達は、皆凄く泣いていて
「雪君と旭陽君?真優から、よく聞いてました」
「何か力になれる事あったら、いつでも言ってね」
母さんが、遊びに出た事なんて、ほとんど記憶にないから
多分、ずっと連絡だけ取ってたんだろうけど
凄く慕われてたのが分かる
何が何だか分からないまま、旭陽さんに言われるがままに
もう、自分が今、泣いてるのかどうかも分からないまま
ぼーっと旭陽さんの隣に立ってると
「父さん!母さん!」
もう、そろそろ片付け始めようかという頃
見知らぬおじさんとおばさんが来た途端、旭陽さんが叫んで、近付いていった
旭陽さんの両親って事は
母さんの両親で
俺の……じいちゃんと…ばあちゃん?
生きて…たんだ……
「どうして、もっと早く来てくれなかったんですか?!」
じいちゃんとばあちゃんなら……
「旭陽……お前、いつまでこっちに居るつもりなんだ?」
何で、今まで会った事なかったんだろ
「そうよ?あなたが居なくちゃ、あちらの方達、皆さん困ってるでしょ?」
なんで、旭陽さんじゃなく
母さんに会いに行ってくれないんだろ
なんで……
悲しくなさそうなんだろ
「そんな事は……今、どうでもいいじゃないですか……」
「そんな事だと?」
「姉さんが…死んだんですよ?」
「そんな事は、分かっている。そのせいで、突然こちらに来た、お前の仕事の心配をしてるんじゃないか」
母さんは……本当の子供じゃなかった?
「俺の心配なんか!……どうして……あなた達は、泣いてないんですか……」
「あの子は、自分から縁を切って、出て行ったのよ?」
「だからって……家族である事に、変わりないでしょう……」
縁を……
だから、会った事なかったんだ
「ん?その子が、真優の子供か?」
「そうです。雪君です」
「まあ…嫌だ!あの男によく似た男の子なんて!」
あの男……父さん?
「母さん!やめて下さい!雪君、ごめん。少し、向こう行ってて」
「女を騙しそうな顔してるわ。汚らわしい!」
「母さん!やめて下さい!何言ってるんですか?!雪君、お願い。向こう行ってて」
女を…騙す……
父さんが?母さんを?
「あなた達は!一体何しに来たんですか?!姉さんに、挨拶しに来たんじゃないなら……もう帰って下さい!」
旭陽さんが、じいちゃんとばあちゃんを、外へと追い出す
母さん……父さんに騙されたの?
父さんは……母さんの事好きじゃなかったの?
俺は…父さんによく似てて……
汚らわしい父さんの……
「うっ!」
吐きそう
トイレ……
「うぇっ……おえっ……うっうっ…がはっ……げほげほっ…」
俺には、母さんを騙した汚らわしい男の血が流れてて
「おえっ……うぐっ…はぁ…はぁ……」
俺は…その男によく似た男で
「うぅ…うぇっ……うぅ……はっ…はぁ…」
母さんは……
どんな気持ちで俺を見てたの?
「う~~……ふっ…うっ……う~~」
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