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「お邪魔します」
「どうぞ、どうぞ。すいません、突然」
「いえ……ただでイチゴ貰えるなんて、有り難いです」
「毎年、田舎から送ってくるんだけどね?男1人で食べきれる量じゃないんだよ!」
「うちの同居人、甘い物と果物、大好物なので、喜びます」
綺麗にしてるなぁ
あ……
リビングの隅に…オモチャ?
遠くから見るだけでも、けっこうある
男1人って言ってたけど、単身赴任とかなのかな
「見てよこれ!」
そう言って開けた冷蔵庫を見ると
「うわぁ~…見事にイチゴがびっしりですね~」
「でしょ?早く食べないと腐ってくしさ」
夏が喜ぶ光景……
「多分、信じられない程食べれると思います」
「ほんとっ?!全部?全部いける?!」
「え~っと…多分2、3日あれば、全部食べれるかもしれませんけど、冷蔵庫が無理です」
「いいよ!明日、あさって、この位の時間に帰ってるから、何時でも取りに来て!」
必死……
でも、分かる気がする
この光景見ただけで、もうイチゴ要らないって思うもん
「じゃ、とりあえず詰めてくね。ほんと、今日偶然君に出会えた奇跡!神に感謝するよ!」
「ははっ。あ、俺も詰めます」
「いいよ、いいよ。すぐ分かるのだけでも、腐ってそうなのとか、見ながら詰めてくから。良かったら、向こうで適当に寛いでて」
「はい……」
聞いてみても、いいかな
「あの、向こうに置いてあるオモチャって……」
「あっ!!あれはそのっ…!そういう趣味があるとかじゃなくて!」
趣味?
「俺、オモチャの会社で働いてて……その関係で置いてあるだけで……決して危ない人間ではないので!」
危ない人間……
「あの…見てもいいですか?」
「え?どうぞ。あ、良かったら遊んでもいい…」
「いいんですか?!」
「……え?うん」
「あっ……すいません」
恥ずっ!
いい歳して、オモチャで遊びたいって怪しい奴じゃん!
「ふっ…実はさ、さっきは格好つけたけど、あそこに置いてあるのは、俺が欲しくて買ったオモチャ」
「え?」
「俺の家、全然余裕のある家じゃなかったから、オモチャ売り場行く度に、いいなぁとか、欲しいなぁとか思っても、買ってもらえない事なんて、多々あって……なんか、オモチャが憧れになっちゃってさ。気付いたら、憧れてるオモチャを製作する側になってた」
今日会ったばっかの俺に、そんな話していいのかな
「一応新しい商品作る為の参考にもしてるんだけど……でもさ。なんか、小さい頃の、ド定番のオモチャって、敵わないんだよなぁ…単純な物ほど奥が深いって言うか……単純なのに飽きないんだよね~……って、ごめん!オモチャについて熱く語ってしまった」
「いえ……俺も、全然余裕のない家だったので、なんか分かります」
オモチャ売り場は……
全然楽しい所じゃなかった
数字が分からなくても
数字が3つか4つか位分かる
数字が4つのオモチャは
なるべく見ない様にしていた
オモチャの置いてある場所へと行ってみる
「う…わ~」
消防車のオモチャ
音がでたり、色んな場所が外れたり、形を変えられたり
これ、やりたかったんだよなぁ
「わ~」
車がいっぱい
ショベルカー
ダンプ
パトカー
救急車
沢山あるのが楽しくて……
1つは何だか悲しくなりそうで、1つも買って貰わなかった
「あっ」
こいつ
この猿、いっつも俺の事馬鹿にして、シンバル叩いてるみたいで嫌いだったけど
シャン シャン シャン シャン
「ははっ」
お前は、ただ仕事してるだけだったんだよな
シャン シャン シャン シャン
「はははっ…変な顔~」
子供用の小さな木琴
音楽なんて、全然興味ないのに、なんか一時期凄く欲しかったの覚えてる
コン キン カン
「あははっ」
こんな音……
全然いい音じゃない
でも……凄く叩きたかったんだ
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