雪side

5/6
前へ
/45ページ
次へ
「お邪魔します」 「どうぞ、どうぞ。すいません、突然」 「いえ……ただでイチゴ貰えるなんて、有り難いです」 「毎年、田舎から送ってくるんだけどね?男1人で食べきれる量じゃないんだよ!」 「うちの同居人、甘い物と果物、大好物なので、喜びます」 綺麗にしてるなぁ あ…… リビングの隅に…オモチャ? 遠くから見るだけでも、けっこうある 男1人って言ってたけど、単身赴任とかなのかな 「見てよこれ!」 そう言って開けた冷蔵庫を見ると 「うわぁ~…見事にイチゴがびっしりですね~」 「でしょ?早く食べないと腐ってくしさ」 夏が喜ぶ光景…… 「多分、信じられない程食べれると思います」 「ほんとっ?!全部?全部いける?!」 「え~っと…多分2、3日あれば、全部食べれるかもしれませんけど、冷蔵庫が無理です」 「いいよ!明日、あさって、この位の時間に帰ってるから、何時でも取りに来て!」 必死…… でも、分かる気がする この光景見ただけで、もうイチゴ要らないって思うもん 「じゃ、とりあえず詰めてくね。ほんと、今日偶然君に出会えた奇跡!神に感謝するよ!」 「ははっ。あ、俺も詰めます」 「いいよ、いいよ。すぐ分かるのだけでも、腐ってそうなのとか、見ながら詰めてくから。良かったら、向こうで適当に寛いでて」 「はい……」 聞いてみても、いいかな 「あの、向こうに置いてあるオモチャって……」 「あっ!!あれはそのっ…!そういう趣味があるとかじゃなくて!」 趣味? 「俺、オモチャの会社で働いてて……その関係で置いてあるだけで……決して危ない人間ではないので!」 危ない人間…… 「あの…見てもいいですか?」 「え?どうぞ。あ、良かったら遊んでもいい…」 「いいんですか?!」 「……え?うん」 「あっ……すいません」 恥ずっ! いい歳して、オモチャで遊びたいって怪しい奴じゃん! 「ふっ…実はさ、さっきは格好つけたけど、あそこに置いてあるのは、俺が欲しくて買ったオモチャ」 「え?」 「俺の家、全然余裕のある家じゃなかったから、オモチャ売り場行く度に、いいなぁとか、欲しいなぁとか思っても、買ってもらえない事なんて、多々あって……なんか、オモチャが憧れになっちゃってさ。気付いたら、憧れてるオモチャを製作する側になってた」 今日会ったばっかの俺に、そんな話していいのかな 「一応新しい商品作る為の参考にもしてるんだけど……でもさ。なんか、小さい頃の、ド定番のオモチャって、敵わないんだよなぁ…単純な物ほど奥が深いって言うか……単純なのに飽きないんだよね~……って、ごめん!オモチャについて熱く語ってしまった」 「いえ……俺も、全然余裕のない家だったので、なんか分かります」 オモチャ売り場は…… 全然楽しい所じゃなかった 数字が分からなくても 数字が3つか4つか位分かる 数字が4つのオモチャは なるべく見ない様にしていた オモチャの置いてある場所へと行ってみる 「う…わ~」 消防車のオモチャ 音がでたり、色んな場所が外れたり、形を変えられたり これ、やりたかったんだよなぁ 「わ~」 車がいっぱい ショベルカー ダンプ パトカー 救急車 沢山あるのが楽しくて…… 1つは何だか悲しくなりそうで、1つも買って貰わなかった 「あっ」 こいつ この猿、いっつも俺の事馬鹿にして、シンバル叩いてるみたいで嫌いだったけど シャン シャン シャン シャン 「ははっ」 お前は、ただ仕事してるだけだったんだよな シャン シャン シャン シャン 「はははっ…変な顔~」 子供用の小さな木琴 音楽なんて、全然興味ないのに、なんか一時期凄く欲しかったの覚えてる コン キン カン 「あははっ」 こんな音…… 全然いい音じゃない でも……凄く叩きたかったんだ
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加