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彩雪side
エレベーターの前に1人の…男の子?
バッグ開いてるけど、言った方がいいかな?
若い子って、あんまり声掛けられたくないかな
でも、中の物落ちたら困るよね
「あの……」
「はい?」
男の子が、顔を上げずに、軽く振り向いた
やっぱ、話し掛けられたくなかったかな
「バッグ……開いてますよ」
「えっ?!」
男の子が、焦ってバッグの中身を確認する
「大丈夫ですか?」
「ふぅ……大丈夫そうです。ありがとうございました」
男の子が、振り返って、顔を上げてお礼を言ってくれる
!
帽子とマスクの隙間から見えた、優しそうな目元は……
忘れられない大切な人に
とてもよく似ている……
男の子が、慌てて下を向く
まずい……
凝視してしまった
怪しいおじさんだと思われたかな
チーン
丁度いいタイミングでエレベーターが来た
男の子が8階を押す
同じ階だったんだ……
「あの…何階ですか?」
「あ…俺も8階です」
親に、怪しい人が居ますとか言わないでね……
「あ…そうだったんですね」
そうだ……
今日も帰ったらまたイチゴ消費しなきゃ
……この子……
イチゴ食べてくれないかな
「なかなか、人と会いませんもんね?」
家族居たりしたら、誰かは好きじゃない?
「そうですね」
怪しいおじさんと話してくれるし
同じ階だから、すぐ持ってけるし
チーン
どうする?
言うか?
「あの…どうぞ」
男の子が、ボタンを押して開けててくれる
「ありがとうございます」
どうする?
会社に持ってく訳に行かないし
こんなチャンスないぞ!
言うか?
「じゃ…」
待って!
「あの!!」
「はい?」
「イチゴは好きですか?!」
あ……
声の掛け方……間違えた……
「……す…好きです…が?」
家の中に通して事情を説明すると、
「うちの同居人、甘い物と果物、大好物なので、喜びます」
良かった
同居人……
家族じゃないのか
高校生にしか見えないけど、大学生なのかな
甘い物と果物が好きって事は、女の子?
彼女と同棲してるのか
冷蔵庫を陣取ってるイチゴを見せる
「多分、信じられない程食べれると思います」
「ほんとっ?!全部?全部いける?!」
「え~っと…多分2、3日あれば、全部食べれるかもしれませんけど、冷蔵庫が無理です」
「いいよ!明日、あさって、この位の時間に帰ってるから、何時でも取りに来て!」
2、3日で全部?!
結構、食いしん坊な彼女さんなのかな?
でも…助かった~
「じゃ、とりあえず詰めてくね。ほんと、今日偶然君に出会えた奇跡!神に感謝するよ!」
「ははっ。あ、俺も詰めます」
「いいよ、いいよ。すぐ分かるのだけでも、腐ってそうなのとか、見ながら詰めてくから。良かったら、向こうで適当に寛いでて」
そう言うと、リビングの方を見ながら
「あの、向こうに置いてあるオモチャって……」
しまった!
男の1人暮らしに、あのオモチャはまずい!
「あっ!!あれはそのっ…!そういう趣味があるとかじゃなくて!」
これは危ない人間認定されても、おかしくない!!
「俺、オモチャの会社で働いてて……その関係で置いてあるだけで……決して危ない人間ではないので!」
信じて!
「あの…見てもいいですか?」
?
見ても……
「え?どうぞ。あ、良かったら遊んでもいい…」
「いいんですか?!」
あれ?
「……え?うん」
「あっ……すいません」
顔を真っ赤にしている
どういう理由かは分からないけど、興味あるのかな
「ふっ…実はさ、さっきは格好つけたけど、あそこに置いてあるのは、俺が欲しくて買ったオモチャ」
「え?」
今の仕事に就いた理由を話してるうちに、いつの間にか、オモチャについて熱く語り始めていた
「……って、ごめん!オモチャについて熱く語ってしまった」
「いえ……俺も、全然余裕のない家だったので、なんか分かります」
そう言って、オモチャの方へと歩いて行った
良かった……
見知らぬおじさんの家に入ったら、1人暮らしなのに、子どものオモチャが沢山ありました
なんて、怪し過ぎる
「う…わ~」
ん?
見ると、消防車のオモチャを見ている
なんか分かります……か
そんな事言っても、俺の思ってる様な気持ちは分からないんだろうなと思ったけど
「わ~」
「あっ」
シャン シャン シャン シャン
「ははっ」
シャン シャン シャン シャン
「はははっ…変な顔~」
ほんとに嬉しそう
俺の気持ち分かるとしたら
なかなか辛い子供時代だぞ?
コン キン カン
「あははっ」
嬉しいな
俺と同じ気持ちじゃないとしても
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