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ガチャ
結局、なんて連絡したら大丈夫なのか分からず、連絡出来ないまま、帰って来てしまった
バタン
「ただいま~っと」
ん?
あ!
またソファーで!
「おい、ゆ…」
こういうのも…やめた方がいいのかな
「はぁ……」
いつから俺は、こんなお節介な奴になったんだ?
ん?
並べられた郵便物
え?
まさか……アパート行って来たのか?
この怪我だから、外出なんてしないと思ってた
おばさんに……会いに行ったのかな……
「しばらく……帰ってなかったもんな」
髪を触ると、まだ少し濡れてる
絆創膏も、湿布も貼ってない
「救急箱…目の前に出してあるのに……」
貼っても……
いいかな
左頬は、少し腫れが引いて、変な色が出始めている
傷は……ちゃんと治るかなぁ
絆創膏を貼ると
「…ん……ん~?…行ってらっしゃい……」
行ってらっしゃい?
寝惚けてんのか
「……早く……帰って……来て……」
母親の……夢見てんのか
いつも…
そう思って待ってたんだろうな
小学生からって言ってた
母親が亡くなった後
……母親が帰って来る事はない家に……居たくなかったのかな
「……なんで」
雪の母親なんだ?
もっと……
他に居るだろ
人殺しとか……
悪い事して、金儲けてる奴とか……
なにも……母親しか居ない雪から、母親取らなくたっていいだろ?
「嫌だったら……後で文句言え」
手首に湿布を貼る
「なあ……俺、怖かったよ。同じ男なのに、力で敵わないって……凄く怖い事だと思った。許した訳じゃないのに……許可したみたいに…何の抵抗も出来ないのが……悔しくて…」
「夏!誰かに無理矢理抱かれたの?!」
突然、ガバッと雪が起き上がる
え?
「雪……お前……起きてたのか?」
「湿布貼ってくれた時にね。ねえ!夏!誰?!誰にヤられたの?!」
「や……ヤられてねえよ!俺の事より……お前の事だろが!」
「俺はどうでもいいんだよ!夏はダメだよ!ねぇ!そいつ、俺がぶん殴って来る!誰?!」
「俺も……俺もお前と同じ気持ちなんだよ!俺の事なんかより、あいつら探して…見付け出して……ぶん殴ってやりたい!あんな……ただでさえ酔っ払って抵抗出来ない雪を……雪が望まないから警察には言わない。でも俺は絶対許さない!」
呪いが存在するなら、呪ってやりたい!
「……そう思ってくれるのは有り難いんだけど、俺には、そう思ってもらえるような価値がないんだよ」
「価値がないってなんだよ!誰がそんな事言ったんだよ!」
「……価値がないっては言われてない」
「じゃあ、何て言われたんだよ?」
「……け…じゃなくて!夏を犯した奴は誰だよ?!」
……今…何て言おうとした?
「だから、犯されてねぇよ!友達が、ふざけただけだ!」
け?……
け、に続く言葉……
「ほんとに?」
「ほんとに。ちょっと壁に押し付けられたり、手首掴まれたりしたから……ほんの少し雪の気持ちが分かったって言うか……」
け、から始まる
価値がないって思わせる言葉
「……は……はあ?!壁に押し付けられたの?手首掴まれたの?誰だよ?そいつ!友達って、大学の?名前は?」
ケチる
これは、合ってんな
「だから、ふざけただけだって」
けなす?
蹴落とす?
「いいから、教えてよ。そいつの名前」
「何、マジんなってんだよ?って……雪と違って、アザになんかなってねぇよ」
雪が、俺の両手首をじっと見る
け…け…
あと、何だ?
「ねえ…あと……何されたの?」
「はあ?いい加減にしろよ。ただの友達同士の遊びだよ」
「遊びで……夏を汚す奴は許さない」
「汚すって……」
汚す……
け、から始まる……
汚される……
汚らわしい……
汚らわしい?
何で…
雪が
誰に、そんな事言われなきゃなんないんだ?
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