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「なあ!夏ってば、聞いてるの?!」
「……汚らわしい…って……誰かに言われたのか?」
「…っ!言われたけど……俺もそう思ってるから、別にいい」
「誰に……そんな事言われたんだ?」
「……だ…だから……俺じゃなくて、夏の話だって!」
「なあ!誰がそんな…酷い事言ったんだよ?雪は、汚らわしいなんて言われる人間じゃな…」
「言われる人間なんだよ!!俺は……俺が嫌いなんだ!俺は……誰よりも自分が気持ち悪い……早く……この顔も…血も……全部失くしたい……早く…この存在を消したいんだ……」
全部失くしたいって……
存在を消したいって……
「だから……死にたいって思うのか?」
「だって……それ以外、方法がないだろ?顔は、整形出来るかもしれないけど……体中の血を抜き取るとか……死ぬしかないだろ?」
「どうして……誰が……どんな理由で、そんな事言ったんだ?」
「……言ったのは…ばあちゃん」
ばあちゃん?
ばあちゃんなんて…居たのか
「理由は……言ったら吐くけど、いいの?」
「は?吐く?よく分かんないけど…いい」
グロテスクな内容なのか?
でも……せっかく聞ける機会だから……
「俺の顔は……母さんを騙して俺を作っといて……母さんが苦労して働いて……死んで…しまっても……何処で何してんのかも分からない……俺の父さんに……似てるんだって」
「……は?何……それ?そんなの……例えそうだとしたって……別にお前に関係…」
「俺は……母さんを騙して……ぐっ……親と縁まで切って家族壊して……うぐっ…」
「雪…吐きそうなのか?トイレ…」
泣いてる……
雪の頬を……
まるで本人は気付いてないかの様に
涙が流れてる
「散々働かせて……ぐっ……全然楽しい事ないまま…ぐっ…うっ……死なせた……俺の父さんに……うぐっ…」
ダダダダ
ガチャ
「雪!」
雪がトイレに駆け込む
「ぐっ…うえっ…おえっ……おえぇっ……」
「雪……」
吐くって……
俺じゃなくて、雪が……
「おえっ……おえっ……うっ……はぁっ……はぁっ……ぐっ…おえぇっ……」
「雪……」
背中を擦ると
「……はぁっ…はぁっ……へへっ……だから……吐くって……言ったじゃん……」
「言葉が足りねぇんだよ……俺が聞いて吐きたくなるのかと思ったろが」
「ははっ……今日……ばあちゃんの夢見て……リアルに思い出したばっかだから、迫力…うっ…うえっ…うっ…うえっ……おえぇっ……」
雪は、しばらく
もう吐く物もないのに、そうしてて
「ゴロゴロゴロゴロ……ペッ…はぁ…スッキリした」
「ごめん…苦しい思いさせて……でも、雪が死にたい理由…ちゃんと聞けて、良かった」
「そ?だからさ、俺は早くこの人生終わらせたいんだよね?」
「気持ちは分かったが、それはダメだ」
「だから、夏とは死ぬまで、なるべく一緒に居たいけど、別れてもつらくならない程度でいて欲しい」
「俺の話、聞いてる?」
俺の方を見ないで、リビングへと歩いて行く
「俺さ…こんなに頑張ってる母さん…誰か助けてよって思ってたんだけど……助けるどころか……まさか、毎日1番許せない相手の顔見せて笑ってたなんて……全然……そんなの考えてなかった……俺が1番…」
「んな訳ないだろ!雪の父さんが、ほんとにそんな人だったのかは…分かんないけど……そんな風に思ってる奴に、雪が似てるとしたら……おばさんが、そんなに頑張る訳ないだろ!どんだけ頑張ってたかは…お前が1番知ってるだろが」
ばあちゃんって……
雪の父さんの事悪く言うんだから、おばさんの方のだよな
なんで、自分の孫にそんな事言うんだよ
そりゃ…雪の父さんを憎む気持ちは、分からなくもないけど
雪は……
雪には、何の罪もないのに
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