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「もし……母さんが、そう思ってくれてたとしても……俺は許せない。母さんは……綺麗なのに…綺麗な服着れなかった。それでも、全然綺麗だったけど……他の母さん達みたいに、オシャレとか……友達とカフェとか…全然……全然なかったんだ……」
「雪……」
俺に背中を向けたまま
泣いてる?
「例え、ばあちゃんが言ったみたいな人じゃないとして…ほんとは、結構いい奴だったとして…じゃあ……なんで、母さんの事、助けてくれなかったの?色々…難しい事とかあるんだろうけど……だって母さん……ずっと働いて……」
「雪…」
後ろから抱き締めると、雪がくるりと、こっちを向いて
「夏っ……聞いてっ……くれる?」
涙を溜めた瞳で、見てくる
「うん」
「母さん……死んだのっ……っ……はぁっ……俺のっ…~~っ…俺のっ…せいかもっ…しれないっ…」
ぎゅっと、俺の服を握ってくる
いや……
「……何言ってんだよ?おばさんは、交通事故で亡くなったんだろ?」
「そっ…だけどっ……母さんっ…あの日っ……少し熱があってっ……仕事っ…休んでって……言ったんだけどっ………っ4月からっ…大学生だもの、頑張らなきゃねって……」
「うん」
「引き留めればっ……良かった……熱…あったからっ………気付くの…遅れたのかもっ…しれない……俺…大学行かせる為にっ……ずっと…働いてっ……きっと…俺の為に…頑張り過ぎて……熱出させちゃったんだ……」
ああ……
そういう…俺のせいね……
「雪の事、大切に思ってたからだろ?」
「だから!…俺の為にっ……俺のせいで……」
「それは違うだろ?分かってるよな?おばさんが、凄く雪の事大切に思ってたのも……だとしたら、ばあちゃんが言ってた、雪の父さんの話が、ほんとな訳ないのも……」
「……っく…じゃっ…じゃあ……誰のせい?」
「誰のって……」
「かっ……母さんっ……誰のせいで死んじゃったの?……俺っ……まだっ……~~っ何にも返してないっ!」
「……うん……そうだな……そうだよな……」
待っててと言える母親が居ない
これから、どんなに雪が
どんなに何を頑張っても
もう母親に見て貰う事は出来ない
「そうだな……」
「うぅ……なんでっ……母さんばっかり……」
なんて言ってあげればいいんだろう
誰のせいって……
そんなの、分かりきってる
ちゃんと確認しないで突っ込んできた車の運転手は
雪の母親と同い年の女の人だったらしい……
その人には、まだ小学生の子供が居るそうだ
「雪……」
きっと……
憎めないんだ
先生が言ってた
葬式の時、運転手の女の人が、旦那と土下座して謝ってたって
その女の人の隣で、女の子が泣いてたって
そんなとこに、子供連れて来るなんて……
俺には卑怯だとしか思えない
「雪……」
何て言えばいいんだろう
言葉が……見付からない
「雪……」
雪が大切なんだって
それだけでも伝えられるように
「雪……」
俺は、ただ名前を呼んで、雪を抱き締めていた
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