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しばらくして落ち着くと
「夏……母さんの顔覚えてる?」
抱き付いたまま、雪が聞いてきた
「当たり前だろ?何回かしか会った事なかったけど、すげぇ若くて綺麗でびっくりしたもん」
「じゃあ……俺の顔の中で、母さんに似てるとこ…ある?」
「雪の顔の中で?どれ……」
雪を1度離して見てみる
「ん~…そうだな…目元かな?あと、耳の形も似てる」
俺がそう答えると
「うわっ!」
雪が飛び付いてきた
「夏…大好き。ありがとう」
喜ぶ答えだった?
「もうちょっと、じっくり見とけば良かったなぁ。そしたら、まだ似てるとこあったかも」
「そんな、ジロジロ見られたくない。何回かしか会ってないのに、耳の形覚えてるなんて、夏のスケベ」
「はっ?!違うって!なんか、雪の耳って耳たぶ丸くて特徴的だなと思ってたから、おばさんに会った時、ああ、おばさん譲りかって思ったんだよ」
「……俺の耳たぶ見てるなんて……エッチ」
「はあ?!」
「嘘……俺は俺の事、やっぱり好きじゃない。でも、母さんと同じとこは好き。教えてくれて、ありがとう」
死んじゃったら、そこも全部失くなっちゃうんだぞ?
今言っても…しょうがないから
雪に、雪の好きな部分を増やしてもらうしかない
「ご褒美に、夏に、いい物あげる」
雪が俺から離れて、冷蔵庫に何か取りに行った
バタン
持って来た袋には
「イチゴ!すげぇ数!どうしたの?これ」
「同じ階の人に、偶然会って貰った。男の1人暮らしで、食べ切れなくて困ってたみたい」
「へぇ~…え?雪、その顔で会ったの?」
「まさか。ちゃんと帽子とマスクしてたよ。今日アパートに行って来たんだ」
「そっか。早速食べようっと」
「もう1袋あるから、頑張って食べてね」
「マジか!」
雪とソファーに座りイチゴを食べる
「実家から送られてきて、大変なんだって。美味しいね?」
「旨い!メチャクチャ旨い!」
「まだまだあるから、明日も明後日も取りに来てって」
「どんだけ?!まあ、食えるけど」
顔も、手首も痛々しい
「あのさ雪。誤魔化さないで答えて欲しいんどけど…」
「何?」
「俺に、色々言われたり、してもらったりするの、迷惑って言うか……正直嫌か?」
「……俺は別にいいんだけど…俺、夏より結構早く死ぬと思うから、だったら仲良くする友達、俺じゃない方が、いいんじゃないかなと思うんだよね…」
「……そういう事か。雪が、されて嫌な訳じゃないんだな?」
ほんとに迷惑とかじゃないのか
「嫌じゃないけど……お互いにその方がいいんじゃない?」
「……分かった。じゃあ、遠慮せず今まで通り、やらせてもらうわ」
「話、聞いてた?」
「聞いてた。雪に迷惑かけて、我慢させてんなら別だけど、そうじゃないなら、俺は好きなように雪と付き合ってく」
「……後で後悔しても知らない」
「後悔なんてしない。まずは、絆創膏と湿布貼らなきゃな。ドライヤーは……もう髪、乾いたか」
救急箱を開ける
雪の頬っぺに絆創膏を貼ると
「ねぇ、夏。ほんとに、夏を襲った奴誰?」
「また、その話か。ほら、手出して。俺の、いつもふざけてる友達だよ」
まだ貼ってなかった片方の手首に湿布を貼る
「その友達と、あんまり2人にならないで」
「ふっ…はいはい」
「何で笑ってんの?!夏は、特別なんだから。夏を傷付ける奴は、許さない」
「雪だって、そうだよ。特別だから、傷付いて欲しくない。分かるだろ?」
「夏と俺は違う。夏は…優しくて綺麗だから…俺は……そんなんじゃない」
「そう?雪の髪……柔らかくて綺麗で、俺好きだけどな」
「髪?やらし!」
「おい!」
雪の好きなとこ
少しずつでいいから
雪に好きになってもらえるように……
雪が、まとめて壊してしまう事が出来ないように……
少しずつ……
雪に伝えていこう
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