或る夜

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或る夜

突然目が覚めた室内は余計な装飾が一切なく 無機質な見慣れない空間で、 自分がそのほぼ中央に配置されたベッドの上に 寝ているのだと理解するのに暫しの時間を要した。 (…………??) 更に寝ころんだまま視線だけ部屋を巡回させれば 様々な情報が現状を仮定から確定へと裏付けていく羽目になった。 「……はぁ……マジか」 両手を空中に浮遊させ脱力すると 思いの外大きな音と共に真横の枕に手が沈んだ。 「!?」 温かい……まるで今しがたまでそこに誰かが…… 俺は慌てて起きようとして今まで経験したこともないような 頭痛と全身の痛みで再びベッドに突っ伏してしまった。 「痛ッテ……」 頭の痛みは分かるとしてこの痛みの要因は? その解答は、 さっき振り下ろした拍子に 例の枕の上に置いてあった紙切れにあった。 “早番なので先に出ます。 君も仕事だったらと思ったので念の為 目覚ましタイマーはかけておきます。 参考までにチェックアウトは10時です” 走り書きというにはあまりに綺麗な文字で書かれた 伝言メモに乾いた笑いが漏れる。 「ご親切にどうも…………ホント……最悪っ」
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