或る夜

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光忠さんはやや面白がって何なら俺が代ろうかと 言ってくれたが、こんなことにあの人を引っ張り出す必要もない。 志田、マジ要注意人物だな。 そもそも今どき公業系でもあるまいし 割り印とか…… ブツブツを頭の中でこれでもかと 文句を垂れながら到着した大堰。 (ハァ……) 「いや、ホント申し訳なかったですね。 わざわざご足労まで頂いて……」 「いえいえ、大丈夫です」 ミリも思ってないだろう表情で 形だけの謝辞を口にする志田に こちらも形だけの返事を返す。 本気でそう思うならそっちが出向いてくるのが筋だろ。 交渉の場ではどんな時でも ちゃんとニッコリと笑えるのが俺の特技で良かった。 (ふぅ……やっと帰れる) 終始笑顔の志田にイライラしつつ 今日は散々な目にあった。 直帰の許可貰ってるし 帰ったらゆっくり酒でも飲んで早めに寝ようとか 考えながら席を立った瞬間、 「破呂さん、今日は本当に申し訳なかったです。 契約も無事に成立したし、今日のお詫びも兼ねて この後少しお時間頂けないでしょうか?」
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