或る夜

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そう言ってきたのは、こっちも同じく思ってもいないことを 言わされている感アリアリの瀬倉。 「いえいえ、お気持ちだけで、ありがとうございます。 私、この後また会社に戻りますので」 やっぱり来たか。 「では、どの日が都合がよろしいでしょうか?」 (…………は?) 今日断ったところで別日にわざわざ会えと? いや、マジ勘弁してくれよ。 …………どうする? 実はこの大堰との契約は うちにとって結構うま味のある内容で だからこそ時間も掛けてきた。 それを志田側も分かっている訳で。 だとして、ここで 誘いを断ったからといって問題はない。 そう問題はないが………… きっと自分からの誘いは 受けるまで引き下がらない性格に思える。 別日にまた会うくらいなら、今日一日だけ付き合うか? 面倒事を今日で済ますか後日に延ばすかを 天秤にかけ会社に電話をするフリをして 許可を取りましたので今日で大丈夫ですと嘘をついた。 「おお!良かった。 お連れしたいお店があるんですよ」 と、志田が満面の笑みで笑ったのが 心の底からムカついた。
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