肥満神とやせ神

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肥満神とやせ神

 ある村に、肥満神とやせ神の伝説が古くから語り継がれていた。肥満神は豊穣と繁栄の象徴とされ、一方のやせ神は飢餓と滅亡の象徴とされていた。ある夜、この伝説が村人の夢に現れ、それ以降、連日その夢を見るようになった。その夢には、次のような光景が描かれていた。  村の広場で、体格の良い肥満神と村人たちが和やかに歓談している。しかし、その賑わいの隅に、ガリガリにやせ細ったやせ神が静かに忍び寄る。その痩せ神は、骨が浮き出ていて、全身が半透明で、まるで幽霊のようだった。やせ神が肥満神に乗り移ると、突然肥満神の表情が変わり、強大な力を振るって広場を破壊し、やがて世界を滅ぼすというものだった。  村人たちは、この夢が何を意味するのか全く分からなかった。村には「夢解師(むかいし)」と呼ばれる人物が一人だけいて、夢の解釈を生業としていた。村人たちは彼に助けを求め、夢の意味を解明してもらった。  夢解師は、長い沈黙の後、村人たちに告げた。「この村には、これから3ドレムの間、これまでにない大繁栄を迎えるでしょう。しかし、その後の3ドレムには、かつてない滅亡の危機が訪れます。繁栄の時期の記憶さえ消し去ってしまうほどの危機です」と。  さらに夢解師は続けた。「隣村から坊主を呼び寄せて祈りを捧げさせなさい。そうすれば、強力な精霊が降臨し、やせ神を追い払ってくれるでしょう」と。  しかし、夢解師が言う「ドレム」とは何を意味するのか、誰にもわからなかった。それは時間の単位なのか、特定の出来事の数を表すのか、すらも不明だった。村の住人たちでさえ、そして夢解師自身も、その正確な意味をつかむことはできなかった。しかし、夢解師の言うことに従って、村では毎年、坊主を呼んで祈りを捧げる儀式が行われた。それが功を奏したのか、これまで滅亡の危機は一度も訪れておらず、村は平和を保っていた。  村人たちは、夢解師の言葉を信じている。彼の解析がどれほど正確であるかは、今後の時が示すだろう。夢が意味することを解明するために、村の人々は新たな方法を模索しているが、精霊の力を借りて平和を守ることは、彼らにとって最も確実な方法のようだ。
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