あれから十年後の彼らは……

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「社長から〈牧場コンビ〉って、いわれたんですけどぉ~~~」 (………………ん?)  いきなり、不可思議な内容を言い出した彼女。真剣に耳を傾けていた自分の脳が固まる。  それは俺だけじゃないようで、皮肉の笑みを零していた巳久利さんと周りにいた当主全員の表情が固まった。  というよりか……、唖然としてしまったというのが正しいかもしれない。  数秒間、沈黙になっている中。会話をブった斬った相手は、マイペースに話を続ける。 「ごっめんなさーい!私ったら。肝心なことを言ってなかったですね~☆この間、案件の打ち合わせの時にぃ~。 〈君たち、息がピッタリの大親友と評判らしいねぇ。周りから愛称で、牧場コンビって言われているんだなんて……。持つべきは、友とは素晴らしいことだ。この時間を大切になさい〉って言われたんですぅ~!」  〈牧場コンビ〉という名称を、初めて知った俺。  周りの当主たちも、唖然を通り越して目を点にする。それは、そうだ。彼女の訴えたいクレームが分からないからだ。  そんな中、未谷さんだけが 「あの駄犬……、なんでこんな時に〈その話題〉を出すの……?ほんっと、自己中なところは学生時代から変わってない……。親から甘やかされた結果がコレか……」  同世代の場違いな発言に呆れと恥が混じった、苦々しい表情で歪めている。 「ほんっと、胸糞悪いわ……」  後、急に冷めた目で相手を見つめつつ、小さく吐き出す。  たぶん、周りの耳には聴こえない音に近い声。 「あら、そうなの。戌塚さん、良かったわねぇ、社長から褒められて。悪いけど……今、私が彼と話しているの。ちょっと席を外してもら……」 「私は牧場コンビって言われて良いんですけどぉー。(嘘)耀ちゃんに失礼、かなと思いましてぇ〜。私はぁ、嬉しいんですけどぉー(嘘)」    そんな彼女の言葉に、くだらない内容だと判断をした最年長の、巳の淑女。  褒めて貰いたいが為の〈かまってちゃん〉と認定し、適当に褒めてこの場から立ち去って貰おうと柔らかい笑みで諭すように伝える。 ーー青筋立てながら。  そんな相手の言葉に、耳に入っていない犬塚さん。人差し指の腹を自身の頰を抑えつつ、間延びした独特の言い回しを続ける。  本当に、何のクレームだか分からないのが本音だ。 「社長に、誰からそんな話しを聞いたのか質問したらぁ〜。《神龍時 宇宙》さんから教えて貰った、って教えてくれましたぁ!」 ーー ーーーー ーーーーーー (ーーー何だってッ!!アイツ、何をやってんだよッッ!?)  ここで、予想外の人物の名前が出た今。まさかの次男坊ときたものだ。  戌塚さんが訴えたい意味が、やっとできた俺。  正直、遠回しすぎて分からない…… (━━というか、最初からそう言ってくれ!時間の無駄すぎる!!)  身内の名前が出て、表情には出ていないと思うが……頭の中で自問自答の会議が始まる。  しかも、この後どう返答して良いのか分からないという最悪の事態。  確かにいつも下の兄弟に関してクレームを貰う。  だいたいのクレームは、宇宙、嵐が多い。  宇宙に関しては、巳久利さんみたいに〈シゴトの高額案件の取得〉についてが多い。  嵐は……まぁ、色々だ。主にあの性格が災いをしている。  だが、今回の宇宙のクレームが案件以外に貰うと思わなかった俺。  この件が本当なら、立派な〈名誉毀損〉である。 「あの〜、不名誉なので牧場コンビって汚名取り下げろって、言ってくれますぅ〜?耀ちゃんだけじゃなくて、私が主に可哀想なのでぇ〜〜」    更に。こちらに不利になる感情の籠った、言葉の弾丸が俺の胸を貫く。 ……ん?今の内容。未谷さんの気遣いが消えたような……?  もう、俺のせいじゃないのに……。  何故、こんな思いをしなくちゃいけないんだ……?  それに、今日は早く帰らないと〈あの方〉が来てしまう!!   ━━━━クソ!今日はなんて……厄日なんだッ!! 「━━ちょっと、今の話し。聞き捨てならないわね!!」
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