あれから十年後の彼らは……

7/9
前へ
/36ページ
次へ
◇◇◇ (━━あの後。草摩さんに聞こうと思って、退勤後に探しに行っても見つからなかったんだよね……。同僚に居場所を聞いたら、) 《草摩さんって、━━━━誰?そんな人、いたっけ??》 「……って、言われたんだよね~。しかも、一緒にレジ研修をやった子に。まぁ、あの人のおかげで。あの会社との相性が悪いことに気づけたから、早々に退職できたけどね。 草摩さんにお礼伝えたかったなぁ……」  思い出に浸りつつ。独り言をボヤいていると、 「ねぇ!さっきから呼び鈴が今でも鳴っているんだけど━━ッ!!くもりか風羅か嵐、居ないの⁉」  二階から再度クレームを貰い我に返る、私。 「ごめーん!今、出るからぁ~!!ちょっと、待ってて」  声の温度から、相当イラついている宇宙兄さん。よほど、仕事に切羽詰まっている様子が目に浮かぶ。  今でも、ピンポーンと連打している呼び鈴。それだけじゃなくて、 「すみませーん。神龍時さん、居ますか~?田川急便でーす。荷物一件、持ってきました~!居ませんかぁ~~?」 と、中性寄りの大きな声が玄関から聞こえる。  おそらく、毎年来るお兄さんの声だろうと察する。  それなのに…………  嵐は、宅配屋に対応する気無い。マジで役に立たない、アイツ!というか、まだ昼寝してるの!?  いつも対応してくれる、くーちゃんもこの日に限って避けているような……?気がする。あのお兄さんのことを快く思っていないらしい……。何故?  海里兄さんは、仕事で帰ってくるのは夕方。  つまり、消去法で対応できるのは私しかいない。  先ほどより、次男のストレスボルテージが上昇しちゃうことを恐れた私。 「はーい!今、行きまぁーす!!」  すぐに余所行き用の声を出し、急いで玄関へ向かおうと居間からボールペンを足早に取りに行く。  テーブルの置かれてる油性ボールペンを手に持ち、玄関に向かおうとした時。  ここで、ふと思った。   「それにしても。私がリラクゼーションで働いていることを誰にも教えていないのに……何で、知っていたんだろう?草摩さん」
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加