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「翼!! 翼!!」
誰かが私の名前を必死に呼んでいる。
ゆっくりと目を開けると涼太の顔が真っ先に確認出来た。
「涼ちゃん……」
「ごめん。一緒にいたのに守れなくて……俺……」
涼太の目から安堵の涙が溢れた。
「心配かけてごめんなさい。」
「翼。あぁよかったわぁ。どうせあんたボーッと歩いてたんでしょう。涼ちゃんがすぐ救急車を呼んでくれて助かったわぁ。」
妹が事故にあって意識不明だったのに、この姉ってば……
「お姉ちゃん、お母さんとお父さんも……」
「唯ちゃんと翔くんも来てるわよ。」
「翼……よかった。」
唯が珍しく大泣きしている。
「翼……」
翔も堪え切れず涙していた。
「皆んな……心配かけてごめんなさい。」
数日の入院の後、私は無事退院した。
大盛況だった文化祭も終わり涼太の部屋で二人きりで打ち上げをした時、思い切ってあの出来事を涼太に打ち明けてみた。
「涼ちゃん。私、意識不明の間に不思議な体験したの。」
「真っ白な所に行った?」
「何で知ってるの?」
「俺、6歳の頃に高熱で死にかけたことがあって、その時にそこに行ったことがあるんだ。
帰る時にドアを通ったら、凄い量の記憶がインプットされて…だから俺、前世の記憶があるんだ。」
そう言えば、私も凄い量の画像が脳にインプットされた…それって…
ふと涼太の顔を見ると、知らないはずの、だけどなんだか懐かしい顔がダブって見えた。
「…拓ちゃん…?」
「やっぱり翼も前世の記憶が刻まれたんだね…
胸に石のネックレスをしてなかったか?」
「してた。半透明の白色に、薄いピンクと水色のマーブル模様の石だった。凄く綺麗だったよ。」
「それ、俺も同じ石を付けていた。ベターハー…」
「ベターハーフの石って伏見課長が言ってた。早く峰岸さんと結ばれるといいですねって…」
涼太に最後まで言わせず、被せる様に言った。
彼は柔らかく微笑んで、悟る様に呟いた。
「俺達、運命の相手なんだよな。俺は6歳の頃からずっと翼が俺のベターハーフって知ってたから、ずっと意識してたよ。」
「涼ちゃん…でも、涼ちゃん凄くモテるから…」
「翼…好きだよ。大好きだ。
……やっと言えた。」
涼太の飛び切りの笑顔に反射的に彼に抱き付き、我に返って急いで離れた。
「翼は?俺の事どう思ってるの?」
「わ、私も…好き…なんだと思う……」
消え入りそうな声でそう答えた。
「じゃあ俺、もう我慢しなくていいよな。」
そう言う涼太のキスの嵐を浴びてしまった。
「涼ちゃん…待って…」
「もう待てない。」
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