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この日も、放課後に文化祭に向けての練習をする。
「コピー曲は形になったね。後は俺のオリジナルだな。じゃあ今日はこの辺で解散しよう。また来週な。」
「ねえ、涼太先輩。」
突然、唯が今朝の続きを話し出した。
「私と翔って二人でいると、胸のこの辺が温かくなるんだけど、涼太先輩もなる?」
「ああ、なるな。昨日の夜、いつもよりも強くそれを感じた。」
「ほらね。やっぱり。 だってよ、翼。」
「お前らもなるの?他のヤツに聞いても誰一人ならないって。」
「翼も昨日なったって。勘のいい涼太先輩ならどういう事か分かるでしょ。」
私は真っ赤な顔を悟られない様に涼太に背を向けていた。
涼太の視線は真っ直ぐに私の後ろ姿を捉えていた。
帰り道、朝に続いて気不味い二人はいつもより距離を取って歩いていた。
涼太を意識し始めた途端に恥ずかしくて仕方がない。
いつもは並んで歩いているのに、涼太の後ろからついていくように歩いていた。
「危ない!!」
突然、振り返った涼太の顔が黒く塗り潰されていく。
「涼……ちゃ……ん……」
私は事故にあい、意識を手放してしまった。
真っ白な空間で目が覚めた。
「ここは……どこ……?」
「お久しぶりです。神崎さん。
あ、今は遠山さんでしたか。」
「え?あなたは誰ですか?
神崎って……?」
「私は伏見と申します。神崎さんはあなたの前世のお名前です。早瀬さんとはもう逢いましたか?あ、今は峰岸さんでしたね。」
「涼ちゃんのこと?」
その時、涼太の事を考えると温かくなるところに、制服には似つかわしくない鎖に繋がれた美しく輝く石のネックレスがある事に気付いた。
石は半透明の白色に、薄いピンクと水色のマーブル模様の石をベースに、周りには細かい細工の金色の模様が縁取られている。
「何これ、綺麗。」
「それはベターハーフの石ですよ。その石の片割れは峰岸さんが持っています。早く結ばれるといいですね。
でも、あなたはまだ此処に来るべきではありません。
このドアを通ってお帰り下さい。」
さっきまでは無かった場所に光るドアが現れていた。
「さあ、早く。皆さん心配していますよ。」
私は言われるがままドアをくぐると、その時突然何千何万という画像が物凄い衝撃と共に脳に刷り込まれていった。
「うわっっ……」
その後目の前が真っ暗になった。
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