4月 ③

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ユズさんは「ないない、あんな器の小さな男に青蜂教会をまとめるなんて、絶対無理」声を張った。 「それが演技だとしたらどうだ?」 「可能性が無いこともないけど……もしそうだとして、巨大組織を簡単には乗っ取れると思いますか?私には思えません」 言いながらも、ユズさんは顔を険しくさせる。 「近藤課長、それどこ情報ですか?」 尋ねると「近々、話す」と言葉を濁した。 「……やっぱり」 まるで彼の考えが読めない。 「ユズ、今言った岩田警部補の件は誰にも話すな。俺が必要だと思った人間にこれから伝える。信頼できる関係者10人程度に。わかったな?」 「了解しました。希子ちゃん、とにかくあの偽弁護士とお金大好き女には気をつけてね」 片方の眉を上げ、腕組みをしながらユズさんはため息をつく。 「はい、もう正体はわかりましたから、大丈夫です。何かあっても近藤課長が側に居てくれますから」 「あらあら、ご馳走さま。新婚っていいわね」 くすくすと笑いながら「近藤課長、また新しい情報があったら共有して下さい。私に何かできることがあるかもしれませんので」そう言い、ユズさんはデスクへ戻ってゆく。 無意識に口にした言葉を今さら意識して、まともに近藤課長を見れなくなった。 「行くぞ、希子」 何事も無かったかのように彼は言う。それはそれで、寂しくなる。 いじける私を置いて、近藤課長は姿を小さくしてゆき、慌ててその背中を追った。 「行くって、どこに?」 「こんなときは、一度頭を冷したほうがいい。ロールケーキでも食べよう」 「あ、あの喫茶店ですね。やったっ」 寂しかったはずなのに、ロールケーキを食べられる喜びが上回った……と思ったけれど、また二人きりであの店へ行けることに喜んでいるような気がして、恥ずかしくなる。
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