3月 ⑦

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妻、新婚。 ……だよね。陽之季ちゃん。あなたなら、言うよね。期待通りの、普通じゃない即答。 誰だかわからないまま、仕方なく挨拶をしようと視線をやったけれど、姿が無かった。 不思議に思った瞬間、顎を下げ、女性が目に入る。 ……小さい。 第一印象は、きっと誰もがそうだと思う。 目測では145センチぐらい。 次に顔を見ると童顔なのに、美人。私とは正反対で、おっとりとしていて品がある。絶対に性格は優しい。身に(まと)う雰囲気だけで、癒される。趣味は茶道や園芸だな、と勝手に想像した。 「もちづ……希子です。妻なんです」 こんなんで、よく青蜂教会だけで演技すればいいなんて言えたなと自覚した。 残念ながら近藤課長の予想は的中し、思わぬ形で証明される。 それにしても、カタコトでひどい自己紹介。 依知花と呼ばれた女性は優し気な目を丸く変化させ「……奥様っ?恋愛のの字も無かった近藤くんが、結婚?」驚いている姿すら、同性から見てもかわいい。 そのかわいさを少しでいいから私へ分けて下さい。 「警視庁内では、まだ誰にも話してないんだ。依知花が初めてだ。だから籍は入れているが、仕事が忙しくて結婚式はまだ先になる予定なんだよ」 「そうなんだ。あ、希子さん、ごめんなさい。聞くだけ聞いて私は名乗ってなくて。私は警視庁特別捜査課の末端警官の久能(くのう) 依知花(いちか)です。近藤くんとは同期なの」 「えっ、同期なんですか?じゃあ、私より歳上?」 初めましての人に、なんて失礼な発言。 「うん、30歳よ」 「ごめんなさい。悪気は無かったんですが……」 「いいのよ。慣れてるから。それより、やっぱり近藤くんの奥様だけあって綺麗。それに素直な人だと感じる」 半分は正解で半分は間違い。 綺麗には程遠く、どこにでもある信号機みたいなレベル。怒りと苛立ちと思いのまま進む、3つしか持ち合わせていない性格。 まだレジには長い列が出来ていて、早くその場を去りたかったのにそうはいかなかなかった。 「近藤くん、こんな素敵な奥様とはどこで出会ったの?」 同期だけあって、話しは盛り上がりを見せた。 「出会いは仕事場だ。希子の正義に対しての熱い思いを聞いて、一目惚れした」
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