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そうなんだけど、そうじゃない。
しかし、そんなこと依知花さんに理解できるはずもなく「新人に手を出したの?意外」くすくすと笑う彼女は上品で、見てるとぽかぽかな気分になる。
「手を出したなんて人聞きが悪い。純愛だ」
……純愛。
一生懸命に想ってくれてるのは、ひしひしと感じる。でも、全部は信用できない。
もしかしたら、これは仕事のためかも。
それに今の私は、平常心を保つのに精一杯で受け止めることも、応えることもできない。
「純愛かぁ、いいなぁ。仕事場の出会いって、じゃあ刑事一課に?」
綺麗な瞳を向けられ私はドキッとした。
「はい、そうです。まだ現場に来てからは2週間しか経ってません」
「……え?2週間で……結婚?」
しまった。やっちゃった。
去年配属されたことにするべきだった。
1年だけ在籍したとしても、新人に変わりはないのに。
「いや……その……」
「配属されてから結婚じゃなく、希子が警察学校に居たときに出会ったんだ」
すかさず近藤課長がフォローを入れる。
「なるほどね。でも、それでも半年ぐらいでしょ?普通はあまり無いって言いたいところだけど、近藤くんらしい。当たり前なんか微塵もないし」
さすが同期だけあって、理解されている。
昔から近藤課長はこうなんだ、と私は苦笑いをした。
今回の私の発言ミスは、近藤課長の性格に助けられた形になる。
「相変わらず、依知花は先を読むな。普通とはなんだと反論するしようとしたが、前に手を打たれた」
「そのくらいわかるよ。いつものことだから。希子さんも変な人に目をつけられて気の毒」
つい肯定しようとして、ギリギリで耐えた。
「いえ、そんな……」
「でもね、近藤くんは変わってるけど、真っ直ぐで信念がある。私の自慢の同期で、尊敬する唯一の人」
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