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短期間で一気に話が進んで、ちゃんと近藤課長という人を見れていなかったことに私は気づく。
厚い同期の信頼。
「まあ、近藤くんは正義感がありすぎて、強引で危なっかしいところがあるけど。それと彼は女性警官の中でも特別人気があるから嫉妬を受けないよう気をつけて」
そう、彼はまさに強引で危なっかしい。
依知花さんは、本当によく理解している。
人気があるのは、そうだろうなと納得した。
失礼だけど、一見鈍感そうな、ふわふわした依知花さんの雰囲気で鋭いことを言う様子が意外だった。
どう返事するべきか迷ったとき、レジの店員さんから声がかかる。
神の一声。
また下手な言葉を発しかねない。
「依知花、またな。今度うちに招待するから、飯でも食べにこいよ」
「新婚さんの家かぁ。30の独身が行ったら、みじめになる気がするけど、将来の勉強のためにお邪魔させてもらおうかな」
「ぜひ、来て下さい」
私は声を張った。
理解者なんて、まさか存在するとは思わなかったため、下手な発言をするかもしれないけど、もっと話したい。
「ありがとう、希子さん」
お互いに笑みを交わして、私と近藤課長は店を出た。
車に乗り、家まで向かう途中「依知花さん、素敵な人ですね」と言うと「ああ、すごくいいやつだ。あいつもマイノリティの中で苦労し、戦っている」ハンドルを強く握って彼は呟く。
「マイノリティ?少数派?どういうことですか?」
「そのうち、わかるさ。言葉ではうまく伝えられない。希子の目で確かめたほうがいい。俺もあいつを尊敬している」
近藤課長は言葉で伝えるのは、どうやら苦手のよう。
私を結婚式場や不動産、青蜂教会に連れて行ったのも、もしかしたら口で説明できなかったからかもしれない。
私が強引と感じてしまうのは、ちゃんと話をしてくれないせい。
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