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たじろぎながら「問題だらけだ。今は俺の経験と直感に従ったほうがいい。オカマの手を借りれば、必ず失敗する。それに、所轄がマスコミ担当していたなんて知れたら、末代までの恥だ」去勢を張って言う。
「報道陣の担当は立派な業務ですよ」
「……いや、従えないね。その男オンナの下について指示通りに動くなんて、みっともない」
近藤課長は威圧的なオーラを纏い、瞬時に手を伸ばし岩田警部補の襟を引いて持ち上げる。
「いい加減にしてくれませんか。ユズをオカマだとか、男オンナだとか尊厳のない呼び方をされて、今にも俺は我を失いそうだ」
「だってそうじゃないか。男なのに、なよなよしやがって」
「じゃあ、あなたは先ほどユズが言った段取りの発想がありましたか?何か動いてますか?」
「……それは、突入して状況判断をしながら瞬時に対応していく」
「じゃあ、ユズと岩田警部補の案では、どちらが人質の安全を救助できる可能性が高いでしょうか?あなたは勘違いしている。解決が正義だと思っているようですが、市民を守るのが正義です」
胸ぐらを掴む力を強くした。岩田警部補の足が宙に浮かんで行く。
「それから、先ほどからオカマや男オンナなんてユズのことを呼ばれてますよね?正直、俺は頭が破裂しそうに怒りを覚えています。できることなら、2、3発殴りたい。人間に言っていい言葉とそうじゃない言葉もわかりませんか?」
「警察はそんな緩くてはダメだと思うんだがね」
「確かに緩いですね。職歴だけで威張り散らした老害が現場に出てこれるんですから」
「老害?」
「ええ、正真正銘の老害ですよ。捜査のやり方がまるでわかっていない。もう二度と俺の部下を馬鹿にしないで頂きたい。そして、今からはユズの指示に従って動いて下さい」
これでもかというほど近藤課長は距離を詰めて「わかりましたか?」と念を押した。
岩田警部補は鼻を広げて「なんでお前の命令を聞かなきゃいけないんだ」近藤課長を両手で押したが微動だにしなかった。
「え、岩田警部補、散々言われていたじゃありませんか。これは警視様の命令ですよ」
「……警視……様」
「階級が上の人から与えられた命令は絶対ですよ。警部補」
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