3月 ⑧

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まだ何か反論しようとしていたけれど、部下達が取り囲むようにして岩田警部補を止め、引きずられるようにして彼らは姿を消した。 ただひとり、とりまきとは別で頭を下げた男性が「重要なときに波風立てて申し訳ありませんでした。俺は岩田警部補の考えは間違ってると思いながらも、言えずにいました。どうかお許し下さい」悔やみが滲む顔。 「君、名前は?」 「管轄署の巡査、山波と申します」 「山波か、覚えておく。後はあのじいさんを頼むぞ」 「はいっ」 彼も私と同じで、様子からして新人だと察しがついた。 唖然と私がしているとユズさんから背中をつつかれ「どう?近藤課長は。あんなに部下を守って助けてくれる上司なんてまずいないわ」じっと近藤課長の背中を見つめて言った。 あんなに面倒な人たちを一網打尽にするなんて、この人が何物かわからなくなる。 ただ、あの真剣で立ち向かう姿はかっこよかったと、のちのち思い出すことになる。 これこそが部下に慕われる本当の理由。 所轄の刑事さんたちの姿が消えたとほぼ同時に、若い男性が「土方警部補」とユズさんへ声を上げながら作戦部屋へ入ってきた。 土方? うそ、ユズさんって警部補なの? さっきの岩田警部補と同じ階級。親子ほど歳が離れてるのに。 「どうしたの?そんなに慌てて」 「手に入りました。あの家の図面」 バッグにファイリングされた紙を見てユズさんは「スコープ部隊と状況を急いで擦り合わせて。機動隊への提案書は私が作るから。とにかく早くね」来たばかりの警官に次の指示を送る。 家の図面、スコープ部隊、家屋内の状況把握をテーブルへ広げ「なに、これ。突入経路にすべて鉄の板を張り巡らせている。この写真から考えると、工事現場に敷いてある鉄板。きっと外の状況は、穴を開けて回りを窺ってるに違いない。計画的じゃないと思ったけど、完全に計画されてた……」頭を抱えた。 「それってもしかして、機動隊が来ても突破口が見当たらないということですか?」
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