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6、龍の叫び
三日前から陽は仕事が終わっても王の間に戻ってこない。
一晩中戻って来ない。朝儀には出席する。アオイは、そこで妻と顔を合わせるが、女王は個人的な会話を避けている。「けつじゃう」も相変わらず、最近はヨウナがイチキにくっついている。手を握ったり、袴を握ったり。イチキは、何処かニヤケながら仕事をしている。
そういえば、イチキは座るようになった。机の影でヨウナがやりたいようにやらせるためだ。多分。
女王は、然り(Yes)な(No)で案件を捌いている。思ひ(保留)は凄く少ない。「けつじゃう」が終わると女王は直ぐに姿を消す。
私を避けているのか………とアオイは思ってしまう。
でも4日目は違った。「けつじゃう」が終わると女王はアオイの方を見た。それは怖い目だった。
「其方も我に付いて参れ。」というと女王はスタスタと王の間の方に行った。アオイは小走りで後をついて行った。
「入ってはいけない部屋」は入ってはいけない。その都度、女王が指示する。それがルールになっていた。
女王がアオイを招いたのは『龍地図』の部屋だ。
アオイは中に入るとビックリした。この部屋は「龍地図」だけの部屋だと思っていたら、壁が抜けていて、部屋は以前見た時より2倍の広さの部屋だった。中には内閣、つまり朝儀の推したち。
足元の地図だけじゃない。丁度、龍の背の方向の壁、上部3分の1が大きなモニターになっている。その前に横長のデスクがあって3柱が座っている。モニターに写っているのは「龍の島国」。
夥しい数の大小の丸。色は5種類。赤、黄、青、緑、オレンジ。それが点滅している。
モニターと同じ画像が足元の大きな龍地図に写っている。
モニターを見ている3柱は口々に言う。
「国内の地震が止まって36時間経過。危険です!」
「関東の房総沖の歪みが溜まりきっています!」
「龍脈が動いています!どんどん西に広がって行きます!」
「陛下!如何なさいますか!」
女王は、腹から声を出して「うるさい!この程度は少し前にあったろうが!まだ、静観じゃ!」と怒鳴った。
アオイは、自分は朝議の連中よりも下なのか……と少し不貞腐れた。
それにしても、こんなものを持って地震観測をしていたのか。データは国土交通省、外局の気象庁のを丸パクリ。リアルタイムだ。
敢えて、古式ゆかしい暮らしを国民にさせて、内閣は人間のテクノロジーを横取りする。赤国も全く同じ。
王とは、図々しい神経の持ち主だとアオイは関心すらした。
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