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16、皇居前広場・総司令本部
高天原の在る者達が龍の島国に到着したのは大地震の約1時間後だった。
皇居前広場、総司令本部にはイチキとヨウナ、気象観測官達の5柱がいた。もちろん、地上ではない地上100メートルのところに浮いていた。衣は調じていない。地球の重力とは無関係である。
ヨウナ以外の4柱はア○パッドとキーボードを女王から渡されていた。
火災が起きている。都内約100カ所から火が出た。延焼中。消防は道路の寸断で到着不能な所が多かった。
イチキは上空にいる赤国のリョウに応援を頼んだ。
火災旋風は都市部の広範囲の火災で起きる。
炎を伴う旋風の発生は大きな被害をもたらす現象だ。しかし、旋風の発生条件や発生メカニズムは未解明。
火災旋風は竜巻に似た外見であるが、竜巻とは全く発生メカニズムが違う。
有名なのは大正時代の関東大震災の「被服廠跡」の火災旋風だ。一度に3万8000人が焼死。この1カ所だけで。
イチキは、リョウに携帯電話で「降雨機編隊」の出動を要請した。
すぐに5機で1編隊の降雨機が東京上空を飛び始めた。只の飛行機に見えてドローンだ。後ろの三角錐に砕いたドライアイスを積んでいる。
人間には見えない。
夕暮れの空を降雨機が飛んでいる。
「春延」から供出された降雨機は50機。全編隊が一斉出動。場所はイチキが指示する。携帯電話から。
とにかく火はなるべく出さない。早いうちに雨の姿を借りて消してしまおうと思った。女王には叱られるかもしれないが、神のみ技でもなんでもいい。火災旋風だけは起こしてはダメだと決めた。
この本部にいる5柱と女王と王配以外は、みんな東京中を走り回っている。
衣を調じ、人を助け、助けた人間と共に弱き若い者達を救助している。
要救助者が救助者に変わる。チームで動く。チームが大きくなりすぎたら、分割する。新たな人間のリーダーは『気』の色を見る。そして決める。
若い被災者を優先する。基準は50歳。
すごいスピードで多数の人間を瓦礫の中から引っ張り出し、避難所に誘導する。ソレをみんなでやっている。1人の人間のリーダーは避難所にたどり着いたら、解任。避難所で頑張ってもらう。柱達はまた、新たな人間の集団を作る。大きくなったら分割、人間のリーダーに任せる。その繰り返しで動いている。その度にイチキに連絡が入る。
全員は助けられない。助けない。優先順位がある。我らは冷酷な神の集団である。
イチキは、ソレを自分に言い聞かせていた。
気象観測管たちは、「龍脈」の動きに注視していた。何度も繰り返す余震。その度に人間達の悲鳴が上がる。
翌朝未明、静岡で巨大地震が起こった。震源地、駿河湾。マグニチュード7.5、震度7激震。
東京も震度5強を観測。
昨日夕方、降雨機は一旦大型飛行艇の中に引っ込めた。火災はあるが、都内で10カ所以下になった。引き続き火災の行方には注視する。
ヨウナが突然言った。「お姉さまが、龍脈の動きをお気になさっています。今どうなっているのじゃ!と少々お怒りです。」
ヨウナは女王と同じ殻に入っていいただけのことはある。女王の言葉を聞く巫女だ。
イチキは気象観測官達に「今どうなっているのか?」ときいた。
「龍脈は西へ西へ伸びています。」と答えた気象観測官の顔は青ざめていた。
静岡に地震、これは東南海地震の始まりだ。
日本は、今、歴史上でも未曾有の災害に直面している。駿河湾なら、もう津波は到達している。
東南海は「半割れ」という現象が起きる。最後には四国沖まで地震は到達するだろうとイチキは予想した。
正に「龍の大暴れ」だ。
人間の政治家には手に負えない事態だ。官僚は優秀でも追いつかない。組織的なレスキュー部隊「自衛隊」も東京を優先する。
我らと同じように。
東日本大震災は正に「教訓」だったのだ。23,000人の尊い犠牲を出し、この日を予言していた。
それを受け取って何を行ってきたかが試されている。
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