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5、ヒカルのプリンセス
ヒカルは父の面談を受けていた。
それは、最初は雑談だった。父は美穂のことだけは良く知っている。
母、陽が疲れて先に寝所に下がって眠ってしまった夜、ヒカルと父は王の間のリビングで少し酒を呑んでいた。
「美穂はどうしてるかな……。」とヒカルが呟くとアオイが食いついた。
「女は、みんな再婚するんでしょう?今頃は新婚で幸せなんじゃないの?」
「そう……だけどさ。美穂は、ほら、醜形恐怖症でしょ。脅迫に近い。本当は普通なのに、『早川ごはんの会」にも来れなかったくらい。だから、1人かもしれないって思っちゃうんだ。」
「1人じゃないでしょう。彼方のご両親も梓もいるし、一也おじさんも放置したりしないよ。なぜ、君はそう思うの?」
「美穂は頑固で僕しか愛していなかったから……変な意地を張っているんじゃないかって……。僕は『龍の島国』の仕事が多くて衣を調じて何回も仕事をした。結婚もした。でも、人間の女から受ける愛情は建前が多かった。そして、それは「家」が絡んでいる結婚が多かった。
美穂とだって、釣り合いが取れたお見合いだ。」
「お見合い結婚の何が悪い?君は知らないだろうけど、私と君の母上はお見合いもいいところだよ。」
「そうなの?」
「そうだよ。親同士がくっつけたんだよ。でも、出会いのきっかけだけだ。私と君の母上は本気で『不倫』と指を刺されようが、気持ちを貫いた。それだけだよ。
「君は美穂ちゃんにどう接していたの?」
「僕は、毎日、帰ると美穂をぎゅっとしてた。美穂は、毎日僕のシフトを掴んで、いつも玄関で待っていた。
3つ年上でも、その姿が可愛くて仕方なかった。梓が赤ちゃんの時は抱っこしていたから、2人まとめてぎゅっとしていた。
あの『ぎゅ』はなんだったんだろう。。。」
「それが君の本心だったんじゃないの。その『ぎゅっ』は心が自発的に身体を動かしていたとしか私には思えないけどね。君は、母上にぎゅっとしてもらうのと美穂をぎゅっとするのとどっちが好きなんだ?」
「それは、比べようがない。比べちゃいけない……分からない。」
「私が王配になって、どのように感じているのかな?」
『カケルが居なくなって母上が泣いていないから嬉しい。お父さんのことは別に……お父さんだから、やっと本来の形になってホッとしている。お父さんが24年も待ち続けたのも知っている。人間の24年は長い。本物の愛情だ。尊敬すらしているよ。
僕は、僕の愛情の在処すら分からない。でも、美穂のことは気になるんだ。」
「そうか……。」アオイは、これ以上は詰めなかった。ヒカルは自分の内側を見つめ始めている。
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