5、ヒカルのプリンセス

2/2
前へ
/53ページ
次へ
ヒカルは、本当の男女間の愛情が理解できないでいた。 暗闇の中で見えてしまったカケルと母の営み。母は、一方的に暴力を受けていた気がした。そして、田中翔がした強姦。あの頃は、本当に実の父親が憎かった。 でも、あの「裁断」で見方が変わってしまった。カケルの資料を全部読んだ。出自の哀れさも知ってしまった。あの「爽」の庶子だった。 あの後、ヒカルは「爽」についても調べた。 「爽」は正妃が生んだ子以外は気に戻してしまう。つまりは殺す。王とその姉が実権を握っている。 赤国のセキが赤子を買ったということになっているが、多分、救ったのだとヒカルだって分かる。その上、下界落とし。 4000年の幽閉。ヒカルが生まれ、在る者(神)として存在してきた時間、ほぼ全部がカケルの幽閉と被っている。 何度、八つ当たりで殴りに行ったことだろう。 物事は一方からだけ見てはいけない。 早川光だった時に父から散々言われたことだ。 私は、今まで関わった人間の妻たちを一方的に決めつけていた。 ヒカルも|女王と同様に「見下しているものを見守る神」だと自分のことを認識し始めていた。 美穂の気の色は、およそ人間ではない。有り得ないほど美しい色をしていた。あまり気の色が読めないヒカルでも最初に会った時に目を奪われ、顔を見ることもできなかった。 海斗は、美穂と初めて会った時に言っていた。 「兄さん。すごい女性に巡り合ったね。文恵も最高の部類だけど、美穂さんには敵わない。」 美穂は絶対に分家が連れてくる。美穂の人生が終わったら。それまでヒカルは父と同じように待つことに決めた。 母上は、ある意味で早川葵を試した。ヒカルも同じようにしようと考えた。 美穂は多分、再婚しない。恋もしない。そういう女性だと信じてみようと思った。 早川美穂の「人生というお役目」が終わったら、私が召し上げる。絶対に私でなければならない。 …………そして、私は美穂をぎゅっとする。ヒカルはその日を夢みていた。 それから数年後……
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加