女王の決断

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女王の決断

「私に付き従うものは、移転の準備をせよ。しばらくは放浪の旅となる。心して取り組め」 「はっ!」  季節は春。野には色とりどりの花が咲き乱れ、暖かく心地よい風が吹いていた。このビーズパレスにも春の便りが届いていたが、場内は騒然としていた。現女王であるエオリアが、娘のハニス王女に王位を譲り城を去ることが決まったからだ。  この国では、王位継承権持つ者が成人すると、城ごと引き渡すことがしきたりとなっている。また、女系の一族のため、必ず女王でなくてはならなかった。  娘の1人から将来女王となるべき者が選ばれると、その者は幼少の頃から特別な扱いを受けることになる。身なりから食事まで他の者とは違った物になるし、侍女が付きっきりで世話をする。  それは、「女王」というものが、唯一無二の存在だからだ。一族の長であり、一族の母になるのだから──。
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