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妙な光景だった。
住み慣れた我が家には何もない。
少し色の変わったフローリングはひんやりと私の足を冷やしている。
部屋を歩く。
ぺた…ぺた…と汗っかきな私の足音がする。
じっとりとした足跡が残っていた。
お気に入りのソファーとか、友達にもらった小さなテーブルとか。
壁に開いた画鋲の跡は残っている。
せっかく遠くから来たのに…
思ってから引っかかった。
私は今までどこにいたのだろう。
ぼやっとした記憶が少しずつ晴れていく。
私はフラフラと家を出た。
「かわいそうになあ…。」
呟いたのはお隣に住むお兄さんだった。
深刻そうな顔で私の部屋のドアを見つめる。
「交通事故、だってよ。」
私は世界まで引っ越してしまったようだ。
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