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だけどそんなコオリの顔には、崇志に怯えている色は見えない。
別に無理をしている風でもなさそうだ。
ヒナタは恐る恐る聞いてみた。
「あの、あたしたちのことが怖くないの?」
「え?」
「だって、あたしたちはバケモノなんだよ」
さっき崇志が自身のことを言った言葉だ。
崇志が自分をバケモノだと呼んだ瞬間、ヒナタも同時に傷ついた。
どんなに取り繕っても、人間から見たら、ヒナタたちはバケモノ。
人間とは違う『妖怪の子孫』。
それは事実だ。
だけどコオリは、
「存じ上げていましたもの」
と首を傾げた。
「崇志さんが私たちとちょっと違うということは、この前宮野さんから教えてもらいましたから。さすがにあの姿には驚きましたけど、でもそれだけです」
「驚いた、だけって……」
コオリの言葉が信じられなかった。
自分たちの正体を明かして、しかも怪我までさせられて、驚くだけで済ませられるものなのか。
「でも、それ……」
ヒナタと崇志の視線を追って、コオリは自分の腕に巻かれた包帯を見下ろした。
怪我したらしい腕をぶんぶんと振ってみせると、
「たいしたことありません。捕まれた場所がちょっと痣になっただけです」
なんて言う。
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