果ての二十日

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だけどそんなコオリの顔には、崇志に怯えている色は見えない。 別に無理をしている風でもなさそうだ。 ヒナタは恐る恐る聞いてみた。 「あの、あたしたちのことが怖くないの?」 「え?」 「だって、あたしたちはなんだよ」 さっき崇志が自身のことを言った言葉だ。 崇志が自分をだと呼んだ瞬間、ヒナタも同時に傷ついた。 どんなに取り繕っても、人間から見たら、ヒナタたちはバケモノ。 人間とは違う『妖怪の子孫』。 それは事実だ。 だけどコオリは、 「存じ上げていましたもの」 と首を傾げた。 「崇志さんが私たちとちょっと違うということは、この前宮野さんから教えてもらいましたから。さすがにあの姿には驚きましたけど、でもそれだけです」 「驚いた、だけって……」 コオリの言葉が信じられなかった。 自分たちの正体を明かして、しかも怪我までさせられて、驚くだけで済ませられるものなのか。 「でも、それ……」 ヒナタと崇志の視線を追って、コオリは自分の腕に巻かれた包帯を見下ろした。 怪我したらしい腕をぶんぶんと振ってみせると、 「たいしたことありません。捕まれた場所がちょっと痣になっただけです」 なんて言う。
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