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多少の嫉妬心も加わって、
「あー、それだとなお難しいですね。ウチは人員も少なくて、調査できる者も限られているので」
とヒナタが言いかけると、
「違うのよ」
みやび先生が口を挟んできた。
「コオリさんが言うのは、言葉通り、相手がさっぱりわからないということ。警察にはもちろん相談済みよ。だけどどんなにパトロールを強化してもらっても、効果がないどころか犯人の正体さえ不明なの」
「どういうことですか?」
「相手の存在がさっぱりわからないってこと。尻尾を掴ませないというか。
警察が言うには、コオリさんの周りにはストーカーはいないのですって。しまいには、ストーカーという存在自体、コオリさんの幻覚じゃないかとまで言われたわ」
みやび先生はそう言って、コオリを促した。
コオリはカバンから一通の白い封筒を出して来た。
「幻覚なんて言われても、今朝も実際に、こんな封筒がマンションのポストに入っていたんです」
表書きには手書きの固い文字で郡真央様の宛名が書いてあった。
差出人の名前はない。
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