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妖怪の子孫
「美人やったなぁ」
みやび先生がコオリを送って出て行ったあと、崇志はふたりの残り香を嗅ぐように大きく深呼吸した。
「ヘンタイ」
ヒナタは汚物を見る目で崇志を睨むがこたえた風はない。
崇志はへらへら笑いながら続けた。
「みやび先生は相変わらず美人だし。コオリちゃんは清楚だけど気が強そうで、まさに生粋のお嬢さまって感じや」
麻生崇志は学生時代からずっとこんな調子だ。
お調子者で言動が軽く、そして女性、特に美人に目がない。
ヒナタは呆れて言う。
「いつもフラれてばっかのクセに懲りないわよね」
「フラれるのはしゃーないやん。相手の気持ちは気持ちやもん。だけど、まずは俺が好きって気持ちを表現しな、なんも始まらねーしね」
「あたしは相手の迷惑も考えなさいって言ってるの」
「迷惑だって言われたら、さっと引けばいいだけやん。俺はくだんのストーカーじゃねぇよ」
崇志はちょっとムッとしたように頬を膨らませる。
「誰もストーカーだなんて言ってないじゃん」
ヒナタは、ただでさえ正体不明のストーカーに悩んでいるコオリに、余計な気がかりを増やすなと言いたかっただけだ。
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