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「それにしても透明人間ねぇ」
話を戻すために先ほど崇志が漏らしたジョークをヒナタは口にした。
「透明人間なんて本当にいると思う?」
すると崇志があっさりと答える。
「いるんじゃね。俺は会ったことはないけど」
それからこともなげに続けた。
「実際、俺らがそうなんだしさ」
「それはそうだけど、透明人間って外国の妖怪じゃない。この日本にいるのかって話よ」
「宇宙ロケットが飛ぶ時代に、外国ってヒナタ」
崇志はおかしそうに笑った。
「普通に飛行機に乗って来るでしょ、透明人間さんもさ」
「乗れるの?」
「そりゃあ乗れるに決まってるじゃん。透明になってもいいし、そうじゃなくてもいいし」
傍から聞くと妙な会話をしているようだが、ふたりの顔は真剣である。
なぜなら、透明人間の存在はふたりにも直結する話だからだ。
「俺らがそう」と崇志がいうとおり、ふたりとも実は純血の人間ではない。
ヒナタの曾祖母は雪女で、崇志の曾祖父は一本だたら。
ふたりの祖先はそれぞれ、人間と結婚して子孫を残した妖怪なのである。
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